不動産鑑定士と宅建士のダブルライセンスは可能?難易度・仕事内容の違いを解説
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「不動産鑑定士」の中には「宅建」保有者もいます。しかし「宅建」をもっていなくても、「不動産鑑定士」を目指す人はいます。
2つの資格のどちらを受けるべきなのか、両方とも受けるべきなのか、2つの資格の違いは何なのか等、判断に迷っている人もいるかもしれません。
そこで今回は、そもそも「不動産鑑定士」と「宅建士」はどう違うのか、ダブルライセンスは可能なのか、どちらの資格を狙うべきなのか等をまとめてみました。
この記事を参考に、ぜひ自分に合った不動産資格の合格を勝ち取ってください。
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1.不動産鑑定士と宅建士のダブルライセンスは可能?
「不動産鑑定士」も「宅建士」も不動産に関する国家資格です。親和性が高いことから「ダブルライセンスの人も多いに違いない」と思うかもしれません。
しかしデータで見ると数は多くありません。「宅建士」の登録者数が1,076,177人(2019年末時点)であるのに対し、「不動産鑑定士」の登録者数は、わずか9,532人(2017年1月1日現在)に過ぎないというのが実態です。
結論からすれば「ダブルライセンスを狙うことは可能」です。また、ダブルで取得することの魅力もあります。しかし非常に難しいチャレンジであることも事実です。
そこで、まずはダブルライセンスのメリットを概観した上で、その難しさの実態に迫ってみることにしましょう。
1-1.ダブルライセンスのメリットは?
ダブルライセンスのメリットには、さまざまなものがあります。ここでは「親和性」と「希少性」に注目して解説します。
1-1-1.親和性
「不動産鑑定士」も「宅建士」も不動産を取り扱う国家資格です。不動産業者が取り扱うのは「仲介業務」だけではありません。不動産物件の鑑定評価の依頼を受けることもあります。
また、鑑定評価を受けたお客様の案件が、売買の仲介へとつながることもあります。売買の仲介にあたっては、単なる営業力や交渉力だけでなく、適切な鑑定能力や緻密な調査能力があった方が、話がまとまりやすくなるというケースもあり得ます。
また別の観点から見ると、「宅建士」として培った営業力や肌感覚をともなう現場力は、机上の理論に偏りがちな「不動産鑑定士」の仕事にも、大きなプラスにつながります。
このように、両資格は親和性が高く、ダブルライセンスにより相乗効果を発揮することができます。仕事の幅も自然と広がっていくはずです。
1-1-2.希少性
2つ目のポイントは希少性です。「不動産鑑定士」と「宅建士」は大きな親和性がありながら、ダブルで取得している人は多くありません。
先ほど紹介したとおり、「宅建士」の登録者数は100万人を超えています。しかし「不動産鑑定士」の登録者数は1万人程度しかいません。ダブルで取得できている人は貴重な存在です。差別化や競争力にもつながり、キャリアの選択肢の幅も大きく広がります。
両方の能力があるということは、「理論上の査定能力」と「実際の売買の現場能力」を併せ持っているということになります。「不動産鑑定士」としても、また「宅建士」としても、クライアントに対して大きな安心感を与えることになるでしょう。
1-2.ダブルライセンスの難易度は?
ダブルライセンスには、さまざまなメリットがあります。しかし、なぜ数が少ないかと言うと、「不動産鑑定士の難易度が高すぎて、ダブル取得が非常に難しい」という点に原因があります。「試験内容の重複」と「難易度の違い」の2つのポイントから解説します。
1-2-1.2つの試験内容には多くの重複がある
いずれも不動産資格なので、試験内容には多くの重複があります。
たとえば「不動産鑑定士」の試験のうち「短答式試験」(1次試験)では37種類の法律をマスターする必要があります。しかし、そのうち13種類は「宅建」で学習する内容と重複しています。
具体的には、不動産登記法や宅建業法、法令上の制限(都市計画法、建築基準法、農地法など)、そして税価格の評定など、宅建で学んだ知識は、不動産鑑定士の「短答式試験」で活かすことが可能です。
また権利関係(民法、借地借家法、区分所有法など)の知識も、不動産鑑定士の「論文式試験」で活用できます。
1-2-2.難易度には大きな開きがある
こうした重複があるため、ダブルライセンスも簡単に思えるかもしれません。しかし実際には難易度に大きな開きがあるのが実態です。
「宅建」試験の場合はマークシートによる1回の試験で終了します。合格率は17%前後です。
しかし「不動産鑑定士」試験の場合は、「短答式試験」と「論文式試験」があります。「短答式試験」は「宅建」を超える分量があり、「論文式試験」は重複が少なくて幅が広いのが特徴です。2年に分けて受験にのぞむ人も少なくありません。
また試験に合格した後の実務研修もハードで、最終的な合格率は2~4%程度と言われています。
受験に要する時間も、宅建なら300時間程度ですが、不動産鑑定士の場合は2,000時間から4,000時間が必要です。
不動産鑑定士が宅建を取るのは簡単です。しかし宅建士が不動産鑑定士に合格するには非常に高いハードルがあるというのが現実です。
結論からすれば「ダブルライセンスを狙うことは可能」ですが、相当な準備をしなければ難しいということは覚えておいてください。なお難易度に関する詳細は、次の記事でも紹介しています。
不動産鑑定士は難易度は低下傾向?宅建との比較・働きながら合格は可能かも解説
2.不動産鑑定士と宅建士の違いとは
続いては「不動産鑑定士」と「宅建士」の違いについて見てみることにしましょう。次の5つの観点で比較をしてみます。
- 仕事内容
- 難易度・合格率
- 勉強時間・費用
- 年収
- 将来性
2-1.仕事内容
まずは仕事内容です。
「不動産鑑定士」と「宅建士」は、いずれも不動産業界ではメインとなる資格です。両者が連携して仕事をする場面も少なくありません。ただし担当する仕事の領域は異なります。主な違いは次のとおりです。
2-1-1.不動産鑑定士の場合
「不動産鑑定士」の仕事は「不動産の鑑定評価書の作成」です。
国や地方自治体、裁判所などの公的機関や銀行、その他個人などから依頼を受け、不動産の価値を評価するのが主な役割です。
具体的には「金融機関による土地の担保評価」や「相続税の納付における土地の鑑定評価」などがあります。
2-1-2.宅建士の場合
「宅建士」の仕事は「不動産取引の仲介業務」です。
不動産の売買や賃貸における物件紹介だけでなく、契約書の作成や重要事項の説明などを行います。
2-2.難易度・合格率
続いては「難易度と合格率」の違いを見てみます。
2-2-1.不動産鑑定士の場合
「不動産鑑定士」の試験は、筆記の「短答式試験」(2科目)と「論文式試験」(12時間で5科目)、そして実務の「実務修習」という3つの試験から構成されています。
「短答式試験」の合格率は32%から33%、「論文式試験」の合格率は14%台です。最終的な合格率は2~4%程度と言われています。
2-2-2.宅建士の場合
「宅建」の合格率は、例年17%前後です。
また「宅建士」試験はマークシートによる全50問の択一問題(4科目)で構成されています。複数回の試験をクリアしなければいけない「不動産鑑定士」試験と比べると、非常に負担の少ない試験と言えます。
2-3.勉強時間・費用
こうした「難易度と合格率」の違いは、「合格に必要な勉強時間」にも表れています。
2-3-1.不動産鑑定士の場合
不動産鑑定士に合格するためには、筆記試験にあたる「短答式」と「論文式」の2試験だけでも、2,000時間から4,000時間の勉強時間を確保する必要があります。
- 短答式試験:800〜1,200時間
- 論文式試験:1,200〜2,900時間
独学で合格を勝ち取るのは難しく、資格学校に通う人も多いです。その分の費用も検討しなければなりません。
また、試験合格後に行われる「実務修習」をクリアするには、通常1〜2年の期間を必要とします。実務修習に要するコストは100万円前後にもおよびます。
2-3-2.宅建士の場合
宅建士の合格に必要な勉強時間は、200時間から400時間です。もし、すでに一定の実務経験がある人なら、さらに短い時間でも合格が可能です。
またスクールに通わず、市販のテキストを使って独学で合格する人も少なくありません。集中して取り組めば、3ヶ月から6ヶ月程度で合格する人もいます。
2-4.年収
今度は「年収」という基準で比較してみることにしましょう。
まず前提として知っておくべきことは、「不動産鑑定士」であれ、「宅建士」であれ、資格そのものによって高年収が保証されているというわけではないということです。つまり人によって年収はピンキリです。
2-4-1.不動産鑑定士の場合
まず不動産鑑定士の場合、鑑定事務所で下積み修行をするような期間なら年収300万円前後の人もいます。
平均的には年収で600万円から700万円が相場と言われていますが、外資系の企業や独立開業した人、地方の公的評価に携わったり、競売評価員の鑑定士になったりした場合は、1,000万円から3,000万円という人もいます。
2-4-2.宅建士の場合
また宅建士の場合、平均なら400万円から600万円と言われます。しかし営業成績によるインセンティブが高い企業の場合、1,000万円を超える人もザラにいます。
年収を「平均」で見れば、宅建士より不動産鑑定士の方が高いです。しかし近年では業務範囲も拡大しています。
不動産鑑定士と言えど、鑑定業務にとどまらず、収益不動産の管理運用を行ったり、企業会計の分野に主軸を置く人、富裕層向けのコンサルティングに注力する人もいます。
また営業力やアピール力、人脈などのさまざまな要因も大きく影響します。そのため、資格によって年収を比べるのは難しく、人によって変わってくるというのが実態です。
2-5.将来性
最後に「将来性」について比較してみます。
2-5-1.不動産鑑定士の場合
まず「不動産鑑定士」については、景気に左右されにくい安定した仕事だと言われています。
たとえば、景気の良い時には不動産取引が活発になるため、鑑定評価の案件も増えます。一方で不景気の場合は、担保評価の仕事が増える傾向にあります。
ただし中長期的に見ると「AI(人工知能)の登場によって、機械に置き換わられるのではないか」との懸念をもつ人もいるかもしれません。
しかし不動産鑑定には、「地域性」や「環境性」など、数値化しにくい要素も影響するため、鑑定士の経験にもとづく判断も重要になります。AIが進化しても「不動産鑑定士」の仕事が無くなることはないでしょう。
2-5-2.宅建士の場合
「宅建士」の場合、賃貸や売買の仲介だけでなく、管理業務や自社開発、コンサルティング等のさまざまな分野があります。
主力となるのは「情報力と営業力」です。AIが普及したとしても、仲介案件が無くなることはありません。
しかし時代の変化もあります。「不動産鑑定士」も「宅建士」も業務の範囲は広がっています。他業種と連携することによって新たなサービスを打ち出す鑑定士や宅建業者も増えています。
いずれの資格においても、将来性があるかどうかは保証できません。しかし、常に新たな可能性を開拓する気概があるかぎり、将来性を悲観する必要はないと言えます。
3.不動産鑑定士と宅建士どっちを受験すべき?
「不動産鑑定士」と「宅建士」の違いについて解説してきました。こうした中、どちらの資格を狙うのが賢明だと言えるのでしょうか。
最後のまとめとして「不動産鑑定士がオススメの人」「宅建士がオススメの人」という2つに分けて説明します。
3-1.不動産鑑定士がオススメの人
「宅建士」よりも「不動産鑑定士」がオススメの人は、なんといっても「絶対に不動産鑑定士になりたい!」という人です。
すでに解説した通り、「不動産鑑定士」になるためのハードルは非常に高いです。試験に合格するだけでも1〜2年、またその後の「実務修習」でも1〜2年を必要とします。勉強時間を確保するため、仕事を辞める人もいます。
また膨大な勉強時間を確保しなければならず、長い受験生活を耐えるだけの経済力も必要となります。資格学校や、実務研修での金銭的な負担も小さくありません。
たしかにステータスも高く、平均年収も悪くありません。しかし「宅建」なら、市販のテキストを使って独学でこなすことができ、わずか数ヶ月で取得できる人もザラにいます。
コストパフォーマンスの点からすれば、「不動産鑑定士」はそれほどお得な資格だとは言えません。長期的な視点に立ち、「どうしても不動産鑑定士として活躍したい!」という強い意思のある人なら、「不動産鑑定士」がオススメです。
もし判断に迷うなら「まずは宅建士に合格してから判断する」というのも良いでしょう。
3-2.宅建士がオススメの人
「国家資格にチャレンジしたことがない」「不動産系の資格が欲しい」という人なら、ぜひおすすめしたいのが「宅建士」です。
「宅建士」なら、独学で合格することもできます。初学者でも、300時間の勉強時間が確保できれば充分に合格が狙えます。資格スクールに通って勉強するとしても、金銭的負担は大きくありません。
また不動産業界に勤めていなくても、宅建合格を目指す過程で「勉強習慣」が身につきます。宅建業以外の仕事においても、確実にメリットがあるはずです。
会社によっては「資格手当」の制度を設けているところもあります。「不動産の専門家になることを狙っているわけではない」という人でも、もし社内に資格手当の制度があれば、年収アップを狙うこともできます。国家資格に合格したということで、社内の評価が上がる可能性もあります。
必要な勉強時間、必要な費用、資格手当の存在などをふまえれば、コストパフォーマンスの高い資格と言えます。「宅建士」を必要とする会社は多く、将来の転職可能性を考えても「宅建士」資格は武器にすることが可能です。
「不動産鑑定士になりたい」という人であっても、「まずは宅建士からチャレンジしてみる」のも一つの方法です。
4.「不動産鑑定士 宅建」のまとめ
「不動産鑑定士」と「宅建士」という2つの資格について解説しました。
コスパの点で見れば、圧倒的にオススメできるのが「宅建士」です。また「不動産鑑定士」に興味があるとしても、「まずは宅建士から攻略する」という方法も「あり」です。
今回の記事では、2つの資格の違いやダブルライセンスの可能性について説明しました。どちらを先に狙うべきかは、あなた自身の「将来の方向性」も関係してきます。
自分に合った不動産資格はどちらなのか、ぜひ本記事を参考に検討してみてください。
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