下請け・元請け・委託の違いは?メリット・デメリットや関係性を解説!
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「下請け」というと、大手企業からこきつかわれる会社のようにイメージする人もいるかもしれません。しかし悪いイメージだけが先行し、「下請けの実態についてはよく知らない」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「下請け」の全貌に迫ってみました。「下請け」にはマイナスのイメージがある一方で、「アウトソーシング」や「協力会社」「パートナー」といったプラスのイメージをもった類似表現もあります。
「下請け」という言葉の意味や「元請け」との関係性、下請けのメリットやデメリットを解説します。
また、下請けから卒業する方法や、下請けから元請けへの転職についてもまとめました。これを読めば、下請けに関する基礎知識が網羅できるはずです。
この記事・サイトの監修者
棚田 健大郎
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、行政書士、FP2級など多数保有
不動産業界歴10年以上。元上場企業不動産会社エイブルの営業マン。3000人の社員の中で、仲介手数料売り上げ金額第1位となるトップセールスを記録。個人のYouTubeチャンネル“棚田行政書士の不動産大学”では、登録者数20万人以上。
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棚田 健大郎
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、行政書士、FP2級など多数保有
不動産業界歴10年以上。元上場企業不動産会社エイブルの営業マン。3000人の社員の中で、仲介手数料売り上げ金額第1位となるトップセールスを記録。個人のYouTubeチャンネル“棚田行政書士の不動産大学”では、登録者数20万人以上。
1.下請けとは?【元請けとの違い】
まずは「下請け」(したうけ)の中身について見てみましょう。
ここでは「下請け」という言葉の意味、元請けとの関係性、類似用語について解説します。
また「下請け」についての理解を深めるため、そもそも下請けがブラックと呼ばれる背景は何か、そして「下請けいじめ」を防ぐために整備された法律についても紹介します。
1-1.「下請け」という言葉の意味
「百科事典マイペディア」によれば、下請けとは「請負人が自ら引き受けた仕事の完成を、さらに第三者(下請人)に請け負わせること」と説明されています。
つまり、お客様から受託した仕事について、自社だけですべてを行うのではなく、その一部を他社に外注することを指します。
その外注先のことを「下請け先」あるいは「下請け人」と呼ぶことになります。
1-2.元請けと下請けの関係(建設業界の場合)
建設業界では、建築主(施主)がゼネコンに対して工事の一式を発注します。
お客様から受注した企業のことを、「元請け」、もしくは「元請業者」といいます。英語では「General Contractor」です。
工事一式を受注したゼネコンは、自分たちでも工事を行いますが、設備工事など一部の工事は専門の工事会社に外注します。
その相手のことを「下請け」もしくは「下請け業者」といいます。英語では「Sub Contractor」で、日本語では「サブコン」といいます。サブコンについては以下の記事も参考にしてください。
サブコンとは?ゼネコンとの違いは?大手7社年収ランキングも解説 |宅建Jobマガジン
サブコン自体も、工事の内容によっては、さらなる下請け業者に外注することもあります。
その場合、「一次下請け」から「二次下請け」へ、「二次下請け」から「三次下請け」へと外注を重ねるかたちとなります。
ポイント建設業の構造は、よくピラミッドのかたちで表現されます。頂点にいるのが「ゼネコン」で、その下にいるのが「サブコン」などの下請け会社です。このピラミッドのことを「重層的ピラミッド構造」、あるいは「重層下請け構造」と呼びます。
1-3.下請けがブラックと呼ばれる背景
こうした「元請け」と「下請け」の構造は、建設業界だけに見られる現象ではありません。他にも、製造業や広告業、IT業界など、さまざまな業界にも存在しています。
下請けが問題になるのは、多重に下請けが存在する場合です。
一般的に、下へ行けばいくほど納期がキツくなります。また、間に入る業者が多いことから1社あたりの利益も減ります。結果として、最終的に工事を担う業者が著しく低い利益で工事をしなければいけない等の無理が生じがちです。
きつい要求に応えるためには、社員をこき使うことも必要になります。ブラック企業が生まれる温床になっているのは、こうした背景があるためです。
1-4.「下請け代金支払遅延等防止法」という法律
そうした問題を避けるため、「下請け代金支払遅延等防止法」(略称:下請法)という法律が制定されています。目的は、下請け事業者の利益を保護することです。
この法律が適用されるのは、以下の取引です。
- 物品の製造、修理
- 情報成果物(ソフトウェアなど)の作成
- 役務(運送、情報処理、ビルメンテナンスなど)の提供の委託
同法では、該当する「親事業者(元請業者)」と「下請事業者(下請け業者)」が資本金によって定義されています。
親事業者 | → | 下請事業者 | |
---|---|---|---|
物品の製造、修理委託の場合 | 資本金3億円超 | → | 資本金3億円以下(個人含む) |
資本金1,000万円超3億円以下 | → | 資本金1,000万円以下(個人含む) | |
情報成果物の作成、役務提供委託の場合 | 資本金5,000万円超 | → | 資本金3億円以下(個人含む) |
資本金1,000万円超5,000万円以下 | → | 資本金1,000万円以下(個人含む) |
法律の詳細については後述します。まずここでは以下の2点をおさえてください。
- 元請けと下請けは、法律で定義されている。
- 下請け業者を保護する法律がある。
1-5.アウトソーシング・委託・協力会社・外注との違い
「下請け」の理解を深めるため、類似用語の意味もおさえておきましょう。例えば次の4つの用語です。
- アウトソーシング
- 委託
- 協力会社
- 外注
1-5-1.アウトソーシング
「アウトソーシング」は、「Out」(外部)と「Sourcing」(資源利用・調達)の2語で構成される和製英語です。
もともとは「外部の資源を有効活用する」という意味合いが強く、「自分より下の存在に対して業務をやらせる」というよりは、「外部の専門家やプロに委託する」という考え方から生まれています。
1-5-2.委託
「委託」は、何らかの実行を依頼して、代行してもらうことをいいます。法律用語ではなく一般用語です。
よく「業務委託契約」という言葉が使われますが、法律用語では「請負契約」と「委任契約」を意味します。
「請負契約」は、成果物の完成と納品を求めるものです。一方「委任契約」は、業務の遂行を求めるものです。完成責任は問われません。
1-5-3.協力会社
「協力会社」は、業務を委託する際の委託先のことをいいます。
ただし一般的に「協力会社」という言葉を使う場合、元請けと下向けのような「上下関係」はありません。業務の完成に不可欠となる「協働パートナー」としての性格をもちます。
1-5-4.外注
「外注」は、外部の業者に仕事を依頼するという意味の一般用語です。法律用語ではありません。
「下請け」の場合は「下請け代金支払遅延等防止法」により、資本金の大きい会社が、規模の小さな会社に対して発注する関係と規定されています(前述の表を参照)。しかし「外注」では企業規模の大小は関係ありません。
2.下請け側・元請け側 それぞれのメリット・デメリット
「下請け」と「元請け」という2つの立場には、それぞれメリットとデメリットがあります。具体的には次のとおりです。
2-1.下請け側のメリット・デメリット
まずは「下請け」の立場から、メリットとデメリットを解説します。
2-1-1.【メリット】営業コストの削減
下請け側のメリットは「営業コストの削減」です。
元請け業者から仕事をもらうことができるため、「新たな仕事案件を獲得するためのコスト」をおさえることができます。
一般的に、企業が新たな仕事を獲得するには、広告宣伝費や営業マンの人件費などが必要です。しかし下請けなら元請けから仕事を振ってもらえるため、そのような営業コストが削減できます。
また場合によっては、技術面や資金面での支援が得られることもあります。規模の小さな下請け会社にとっては大きなメリットだと言えるでしょう。
2-1-2.【デメリット】仕事が言い値になる
一方でデメリットになるのが「仕事が言い値になる」という点です。
下請けは、元請けから仕事を振ってもらうという存在です。もし元請けの希望価格に応えることができなければ、元請けは別の業者に発注するかもしれません。事実上、価格は元請けが自由に設定できてしまうというのが実態です。
「世界大百科事典 第2版」では、次のように解説されています。
- 下請け=価格形成力の対等でない外注
- 下請け関係=発注企業の価格形成力が強く,受注企業が不利をこうむる外注関係
実際に「下請けいじめ」という言葉もあります。たとえば以下のようなケースです。
- 代金の不払い
- 注文品の受け取り拒否
- 報復的な取引中止
- 不当な条件変更の強制
- 不当な買い叩き
下請けとしては、元請けの要請に従わなければ生きていけないという実態があります。詳しくは以下のページも参考にしてください。
もしかして下請けいじめを受けているかも? 違反行動と対処法を解説|企業法務コラム|顧問弁護士・企業法務ならベリーベスト法律事務所
2-2.元請け側のメリット・デメリット
今度は「元請け」の立場から見たメリットとデメリットを解説します。
2-2-1.【メリット】仕事の効率化
元請け側のメリットは「仕事の効率化」です。
どんなに大きな会社でも、得意分野と不得意分野があります。もし不得意分野を外注することができれば、元請け会社は「得意分野に注力できる」というメリットがあります。
また、自社で取り組んだら高コストになってしまうという場合でも、もし低コストで担ってくれる下請けがあれば、利益面でもプラスになります。
新たな仕事を受けるためには、一定の機械設備や高いスキルをもつ人材を用意しなければいけないこともあるでしょう。しかし下請けに外注できれば、そのような準備が不要になります。
結果として、景気変動の波に左右されない企業体質につながります。
2-2-2.【デメリット】意思疎通の難しさ
元請け側のデメリットは「外注先との意思疎通が難しい」という点です。
たとえば外注先が多ければ多いほど、コミュニケーションが煩雑になります。仕事の納期管理や品質管理も難しくなり、トラブルが起きる可能性も高まります。
また外注先が、さらに社外へ外注するというケースもあるでしょう。下請け階層が下がれば下がるほど、トラブルのリスクは高まります。意思疎通だけでなく、情報漏洩の管理も難しくなるはずです。
さらなるリスクとしては、以下のようなパターンも考えられます。
- 外注先が納期を守れない場合
- 外注先の事情で、急に追加のコストが発生する場合
- 外注先がきちんと仕事を完成させずに逃げてしまう場合
「元請けと下請けの構造」を考える時、「下請けはいじめられる存在で、元請けばかりが有利になる」とも言われます。しかし元請け側にも相応のリスクがあるということを知っておきましょう。
3.下請けから卒業する方法
下請けには「営業コストが下がる」「元請けが仕事をもってきてくれる」というメリットがあります。しかし「仕事が言い値になる」「元請けからいじめられる」というデメリットもあります。
将来への不安から「下請けから脱したい」という会社も多いです。下請けから脱却するには、どうすればよいのでしょうか。その方法を紹介します。
3-1.下請けから脱却するためには
下請けの弱点は「元請けから仕事を振ってもらわないことには生きていけない」ということです。下請けから脱却するためには「元請けに対する依存体質」を断ち切る必要があります。
具体的には「みずから仕事を獲得できるチカラ」をつけることが重要です。
たとえば、技術力や開発力、企画力を上げることができれば、元請け以外からも仕事の問い合わせが来るようになるかもしれません。独自商品をつくるのも一つの方法です。
なかなか問い合わせが来ない状況が続いたとしても、営業力やマーケティング力をつけることができれば、新規顧客を開拓したり、新たな仕事をつかまえにいくことが可能になります。
また次のような方法もあります。
- 企業向けではなく、個人向けにも販売する(BtoBからBtoCへの転換)
- 対面販売だけでなく、ネット販売にもチャレンジする(販売チャネルの追加)
こうして自社で仕事がとれる環境を作ることができれば、次第に元請けへの依存度を下げていくことができます。
3-2.下請けで不利益を被らない方法
下請けから卒業するといっても、いきなり「元請けからの注文を断る」という選択をするのは困難です。
しかし、元請けから受ける仕事であっても、もし取引の条件や利益率を向上させることができれば、無理に仕事を断る必要もなくなります。
大事なポイントは「元請けからの仕事で不利益を被らないようにする」ということです。そのためにも、冒頭で紹介した法律「下請代金支払遅延等防止法」をきちんと学んでおくのがオススメです。
3-2-1.生協「下請法違反」で519社が39億円の不利益を被った事例も
たとえば2012年9月には、日本生活協同組合連合会(生協)が「下請法違反」の勧告を受けました。
問題視されたのは、「コープ」ブランド商品の製造委託先519社に対する「不当な値引きの要求」(約25億7,000万円)と「代金支払いの遅延」(遅延利息約13億2,000万円)です。
生協連、支払い不当減額39億円 下請法違反で最大額: 日本経済新聞
下請代金支払遅延等防止法違反に関するお詫びとお知らせ | お知らせ | 日本生活協同組合連合会
3-2-2.「下請法」を理解することが重要
「下請法」は、下請け企業を保護するための法律です。
「資本金1,000万円以下の会社(個人含む)」が「資本金1,000万円超の会社」から仕事を受ける場合、この法律が適用されるケースがあります。
下請けを保護するためのルールが規定されているため、不利益を受けないためには「下請法」を勉強しておくことが重要です。
主なルールや罰則については、弁護士による解説動画があるので、ぜひチェックしてみてください。
下請法とは?弁護士がわかりやすく解説|咲くやこの花法律事務所
また「親事業者の義務や禁止行為」の詳細、「講習会・セミナー」の情報、案内リーフレットなどについては、中小企業庁の以下ページを参考にしてください。
4.元請け企業に転職することは可能?
どの業界でも「下請けが弱く、元請けが強い」という傾向にあります。
下請けに行けば行くほど利益も小さくなります。そのため、労働環境や年収、福利厚生なども、元請け企業の方が条件が良いというのが実態です。
下請け会社から元請け会社に転職することは可能なのでしょうか。
4-1.下請けから元請けへの転職は可能
結論からすれば、下請け会社から元請け会社への転職は「可能」です。ただし、簡単ではありません。
実際、下請け会社で実績を積み、専門の資格を取得したり、特定分野に精通した上で「元請け」への転職を果たす人も少なくありません。
ただし、元請け会社の多くは一流企業です。下請け会社よりも規模が大きく、豊富なスキルをもった優秀な人材が集まっています。採用されるためには、それに匹敵する高い能力を認めてもらわなければなりません。
4-2.同じ業界での転職の注意点
下請けから元請けに転職する場合、多くは「同じ業界内での転職」になります。そのため、採用側が敬遠する場合もあるので注意しましょう。
企業の内容や規模にもよりますが、たとえばライバル企業間での転職であれば、社内情報やノウハウ、顧客などの流出リスクも考えられます。
同じ業界内での転職にあたっては、企業間の関係性をわきまえた上で、慎重に行うことをおすすめします。今後の仕事のためにも、円満な人間関係の維持にも配慮するようにしましょう。
5.「下請け」のまとめ
「下請け」にまつわる基礎知識を解説してきました。
「下請けいじめ」という言葉があるように、下請けにはネガティブなイメージがつきまといます。しかし下請けにもメリットがあります。元請け企業の側にしても、仕事を完成させるためには、優秀な下請けによる支援が不可欠です。
一方で、努力次第で「下請け」を脱却することは可能です。また下請けの人が元請け企業に転職することも不可能ではありません。
「下請け」の理解を深めることができれば、また新たな視点から業界全体を見つめることができるはずです。
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