不動産鑑定士の実務修習!費用・期間・年齢制限などを解説
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不動産業界の最高峰資格とされるのが「不動産鑑定士」です。日本有数の難関資格として知られていますが、筆記試験に合格した後も、さらにハードな実務修習が待ち受けています。
「試験については調べてみたものの、実務修習の中身はよく知らない」という人や、「そもそもどれくらい難しい研修なの?」「働きながらでもクリアできる?」といった不安を感じている人もいるはずです
そこで今回は、不動産鑑定士の実務修習の内容や、必要なコスト、実務修習について詳しく知るための方法について解説しました。この記事をヒントに、ぜひ不動産鑑定士への一歩を歩み始めてください。
目次
1.不動産鑑定士の実務修習について【働くまでの流れ】
「不動産鑑定士」の試験は、筆記の「短答式」と「論文式」という2つの試験で構成されています。しかしこの2試験に合格しただけでは、不動産鑑定士として働き始めることはできません。
まずは、「試験に合格してから、不動産鑑定士としての業務がスタートするまでの流れ」を見てみることにしましょう。
1-1.筆記試験の後に「実務修習」がある
「不動産鑑定士」になるには、「筆記試験」だけでなく「実務試験」にも合格する必要があります。それが「実務修習」と呼ばれるものです。
- 筆記試験:「短答式試験」と「論文式試験」
- 実務試験:「実務修習」
「実務修習」は筆記試験の合格後に行われるもので、実際に指導鑑定士の指導を受けながら「鑑定評価報告書」を作成します。
この3つをクリアして、ようやく「不動産鑑定士」としての登録申請が可能になります。
なお「試験」の詳しい内容や難易度については次の記事も参考にしてください。
1-2.「実務修習」は3段階
実務修習は「講義」「基本演習」「実地演習」という3つの段階で構成されています。その後に「修了考査」が行われ、最終的な合否が決まります。
- 不動産の鑑定評価に関する講義
- 基本演習
- 実地演習
- 修了考査
「実務修習」は、「1年コース」と「2年コース」から選択することができます。ただし内容がハードなため、多くの人は「2年コース」を選択しているようです。
また「1年コース」を選択した人でも、途中でこなすのが困難になり「2年コース」への変更を余儀なくされるという人もいます。
なお2021年スタート分は以下の期間で実施されます。
- 1年コース:2021年3月1日〜2022年2月28日(1年間)
- 2年コース:2021年3月1日〜2022年11月30日(1年9ヶ月間)
全体像をおさえるためには、スケジュール表を確認することをおすすめします。詳細は次のページにまとめられているので、ぜひチェックしてみてください。
◆第15回実務修習 変更後のスケジュール【改正概要資料(1)参照】(日本不動産鑑定士協会連合会)
1-2-1.不動産の鑑定評価に関する講義
まず最初に行われるのが「実務に関する講義」です。
不動産鑑定評価の実務に関する基礎知識を、eラーニング形式で学習します。講義は全16科目あり、最後に確認テストがあります。
2021年スタート分については、以下の期間で実施されます。
- 1年コース:2021年3月1日〜6月30日(4ヶ月間)
- 2年コース:2021年3月1日〜2022年1月31日(11ヶ月間)
1-2-2.基本演習
次に行われるのが「基本演習」です。
実務修習生が、現地調査から「鑑定評価報告書」の作成までをこなすことにより、その作成実務を習得するという内容です。
2021年スタート分については、以下の期間で実施されます。なお演習は東京で開催されます。
- 1年コース:2021年7月、8月、10月、12月の4セット
- 2年コース:2022年5月、6月、8月、9月の4セット
1-2-3.実地演習
1つ目に紹介した「実務に関する講義」と同時並行で行われるのが「実地演習」です。
2つ目の「基本演習」で行うのは「作成実務」の習得ですが、「実地演習」では「評価実務」の習得に主眼が置かれます。内容は以下2つの演習です。
- 物件調査実地演習
- 一般実地演習
2021年スタート分については、以下の期間で実施されます。
1年コースの場合 | ||
---|---|---|
物件調査 | 2021年3月1日〜4月15日 | 1.5ヶ月間 |
一般実地演習の1回目報告(4件提出) | 2021年3月1日〜6月30日 | 4ヶ月間 |
一般実地演習の2回目報告(5件提出) | 2021年7月1日〜10月31日 | 4ヶ月間 |
一般実地演習の3回目報告(4件提出) | 2021年11月1日〜2022年1月31日 | 3ヶ月間 |
2年コースの場合 | ||
---|---|---|
物件調査 | 2021年3月1日〜4月15日 | 1.5ヶ月間 |
一般実地演習の1回目報告(2件提出) | 2021年3月1日〜6月30日 | 4ヶ月間 |
一般実地演習の2回目報告(4件提出) | 2021年7月1日〜10月31日 | 4ヶ月間 |
一般実地演習の3回目報告(3件提出) | 2021年11月1日〜2022年1月31日 | 3ヶ月間 |
一般実地演習の4回目報告(4件提出) | 2022年2月1日〜5月31日 | 4ヶ月間 |
一般実地演習の5回目報告(再履修案件 | 2022年6月1日〜7月31日 | 2ヶ月間 |
一般実地演習の6回目報告(再々履修案件) | 2022年8月1日〜10月31日 | 3ヶ月間 |
1-3.修了考査について
実務修習は「講義」「基本演習」「実地演習」という3つのステップで行われますが、これが修了すると最終ステップである「修了考査」に進むことができます。
内容は「記述考査」と「口述考査」の2つです。
「記述考査」は、多肢択一式の問題と論文式の問題で構成され、試験時間は2時間です。
「口述考査」では、すでに提出してある13類型の報告書の中の1つが手渡され、その評価の詳細について質問を受けることになります。審査員は3人です。
合格率は例年85%前後となっており、不合格になった場合は再試験を受けなければなりません。試験の開催場所は東京で、2021年スタート分については以下の日程で実施されます。
- 1年コース:2022年4月(不合格者のうち一定水準を達成している場合は2022年7月の再考査に挑戦することが可能)
- 2年コース:2023年1月〜2月予定
この「修了考査」に合格すると、ようやく「不動産鑑定士」としての登録が可能になります。なお「実務修習機関」や「指導鑑定士」については、次のページで公表されています。
実地演習実施機関及び指導鑑定士一覧 2020/11/11現在(日本不動産鑑定士協会連合会)
2.不動産鑑定士の実務修習の内容
ここまでは「試験に合格してから、不動産鑑定士としての業務がスタートするまで」の概要とスケジュールの流れを説明してきました。今度は、実務修習の具体的な中身を解説します。
2-1.講義
まず1つ目の「実務に関する講義」では、不動産の鑑定評価の実務を学びます。
具体的に学ぶ内容は次のとおりです。
- 基礎知識:統計や登記法など
- 応用知識:物件の種類別の鑑定法など(土地や区分所有建物など)
2-2.基本演習
2つ目の「基本演習」では、「鑑定評価報告書の作成」の実務を学びます。
土地や借地、借家など、物件の種類ごとに、演習形式で行われます。現地調査をした上で、1グループ4名での討論を行います。
その内容にもとづき各自で「鑑定評価報告書」を作成し、単位認定の審査に移ります。
宿泊も含めた研修で、「鑑定評価報告書」の作成を実践形式で学ぶという内容になっています。
2-3.実地演習
3つ目の「実地演習」では、鑑定評価における「評価」の実務を学びます。内容は以下2つの演習です。
- 物件調査実地演習
- 一般実地演習
①の「物件調査実地演習」では、物件調査の手法を学びます。土地と建物を1件ずつ調査して「物件調査報告書」を作成します。
作成した報告書は、指導鑑定士によってチェックされ、その後に日本不動産鑑定士協会連合会で、正式な審査を受けることになります。
続いて、②の「一般実地演習」では、鑑定評価における類型別の演習を行います。
まず、実際に存在する不動産物件をテーマにして「鑑定評価依頼書」が提示されます。依頼書に書かれているのは、不動産鑑定評価基準で定められている基本的事項です。
実務修習生はその依頼書をもとにして、合計で全13件類型の「鑑定評価報告書」を作成することになります。取り扱う物件は、農地や宅地、自家用の建物や収益物件など種類はさまざまです。
演習は指導鑑定士の指導を受けながら行われ、一定期間ごとに、作成した「鑑定評価報告書」を日本不動産鑑定士協会に提出します。
13種類もの物件を実際に調査しながら行う必要があるため「1年コース」の場合は、かなりタイトなスケジュールになるようです。
3.不動産鑑定士の実務修習の費用・働きながらでも受講できる?【年齢制限】
実務修習のスケジュールと内容について説明してきましたが、気をつけておかなければいけない点があります。それは「時間と費用」のコスト面です。
今度は、実務修習に必要な費用、そして社会人でも実務修習をクリアできるのか、という点について見ていくことにしましょう。
3-1.不動産鑑定士の実務修習には100万円かかる
不動産鑑定士の実務修習には2つのコストがかかります。
1つは「日本不動産鑑定士協会連合会」へ支払うもの、もう1つは「実地演習実施鑑定業者、または実地演習実施大学」へ支払うものです。
合計するとかなりの出費になるため、修習生の間はどの不動産鑑定士候補者も、生活が苦しくなりがちです。どれくらいの負担になるのか、事前にきちんと把握しておきましょう。
3-1-1.日本不動産鑑定士協会連合会へ支払うもの
まず、日本不動産鑑定士協会連合会へ支払う費用は次のとおりです。
- 実務に関する講義:98,700円
- 基本演習:174,800円
- 実地演習(物件調査):2,500円
- 実地演習(一般):89,700円
合計で365,700円になります。詳細については次のページを参考にしてください。
令和元年「第14回実務修習」受講申請案内書(日本不動産鑑定士協会連合会)
3-1-2.実地演習実施鑑定業者または実地演習実施大学へ支払うもの
また、3つ目の「実地演習」については、「実地演習実施鑑定業者」もしくは「実地演習実施大学」に対する支払いとして、約100万円ほどの研修費用を見ておかなければなりません。
業者によって異なりますが、ここでは大島不動産鑑定で研修を受ける場合を紹介します。
- 物件調査実地演習:22,000円
- 一般実地演習:728,000円
- 資料取得費等:140,000円
- 修了考査対策:100,000円(実地演習終了後の勉強会の費用)
合計で99万円、交通費は別途各自で負担というかたちです。詳細については、大島不動産鑑定のページを参考にしてください。
3-2.働きながらでも実務修習はクリアできる?
続いては「時間的なコスト」です。
実務修習には年齢制限がありません。社会人でも働きながら受講することが可能です。
すでに紹介したとおり「1年コース」だけでなく「2年コース」もあります。「2年コース」なら、時間をかけてじっくり学ぶことができます。
また実施演習の規定によれば、指導鑑定士からの直接指導は、原則として週に1度受ければ問題ないとされています(なおオンラインでの指導は認められていません)。
しかし確実に合格しようと思うなら、それなりの時間を投じる必要があります。
たとえば前述の大島不動産鑑定のウェブサイトを見ると、次のような説明があります。
「弊社でももちろん1週間に1回は最低限指導をしますが、人によってはほぼ毎日事務所に来て作業をしている方もいらっしゃいます」
「(作業場所は)24時間365日開放していますので、やる気のある方は徹夜で作業していただいても結構ですし、そういう方をお待ちしています」
これを読むだけでも、かなりハードなプログラムであることがわかるのではないでしょうか。
「1年コース」を選択しても、途中で「2年コース」に切り替えざるを得ないという人もいます。時間的に間に合わず、再試験を余儀なくされる人もいます。
社会人が働きながら受講することは可能ですが、もし働きながら取得をしたいなら「休みがとりやすい会社」の方が有利だと言えそうです。
4.不動産鑑定士の実務修習について学ぶ方法
不動産鑑定士の実務修習について解説してきました。より具体的に内容を知りたいなら、「体験記を読む」ことと「講演会に参加する」ことをおすすめしています。
4-1.体験記を読む
やはり実際に体験した人の生の声は貴重です。
ウェブで検索してみると「修了考査の合格体験記」を見つけることができます。研修の内容についてだけでなく、「どれくらい大変な研修なのか」「困難を乗り越えるにはどんな工夫が必要か」といったことがわかります。
たとえば以下のページを見ると、明海大学不動産研究センターにおける修了考査の合格体験記を読むことができます。ぜひチェックしてみてください。
修了考査合格体験記 | 不動産鑑定士実務修習 | 明海大学 不動産研究センター
4-2.講演会に参加する
実務修習について、より深く知るためのもう一つの手段は「講演会に参加する」ということです。
たとえば資格学校大手のLECでは、以下のようなテーマで「不動産鑑定士の実務家講演会」を開催しています。
「新しい生活様式に合わせた実務修習制度とは?」
株式会社大島不動産鑑定/代表取締役/不動産鑑定士:大島 大容氏
2020年の開催は12月26日で、講演者は先ほど紹介した大島不動産鑑定の代表です。参加は無料で、予約も不要です。
実務修習制度の最新情報や、実務修習を乗り切るためのノウハウを知ることができるので役立つはずです。ぜひチェックしてみてください。
不動産鑑定士 実務家講演会「新しい生活様式に合わせた実務修習制度とは?」 – 不動産鑑定士|LEC東京リーガルマインド
なお、2019年に行われた講演については、動画やレジュメPDFの閲覧も可能です。
5.「不動産鑑定士の実務修習」のまとめ
不動産鑑定士の実務修習について解説しました。
不動産鑑定士は難関試験ですが、試験に合格できても「実務修習」をクリアしなければ「不動産鑑定士」を名乗ることはできません。
今回の記事では、実務修習の制度や仕組みに加え、どれくらい大変な内容かを説明してきました。時間もかかる上に、お金もかかります。
たしかに内容はハードです。しかし頑張って乗り越えて、「不動産鑑定士」としての人生をスタートできている人たちもたくさんいるということを、ぜひ覚えておいてください。
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