建築士法改正の内容は?試験制度・仕事内容への影響を解説【実務経験・学科免除・図書保存】
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「建築士法」の改正がこの令和2年3月に施行されました。建築士志望者にどんな影響があるのでしょう?
「建築士法は何が変わったの?」
「試験に影響はある?」
「仕事に何か影響はある?」
今回の改正は試験制度の変更の他、仕事内容にも影響があります。仕事内容が変わるということは、試験内容にも影響が出るということです。気になりますね?
今回は「建築士法改正」を解説します。どんな影響があるか簡潔につかんで今後に備えましょう。受験の参考に、最後までお読みください。
1.建築士法の改正について【2020年3月1日】
令和2年3月1日に建築士法の一部を改正する法律(平成30年法律第93号)が施行されました。
背景として、2005年に発覚した構造計算書偽造事件を契機に、一気に建築士・建築基準法のコンプライアンスに注目が集まった結果、建築士試験のハードルが上がった関係で、受験者が激減してしまい、人手不足になってしまったことがあります。
この状況に対処し、建築士人材を継続的かつ安定的に確保するため、建築士試験の受験資格を改めること等により、建築士試験の受験機会が拡大されました。
また、建築士への風当たりの強さに対応するため、今まで保管不要だった一部構造安全性を確かめるための設計図書も保存が義務付けられ、建築士が設計上の問題点を疑われないよう配慮されました。
出典:建築士法の一部を改正する法律(平成30年法律第93号)等について(国土交通省)
2.建築士法の改正が試験に与える影響【受験資格の緩和】
まず法改正が試験制度へ与える影響ですが、受験資格が大幅に緩和され、
- 実務経験なしに受験が可能になること
- 実務経験として認められる業務が大幅に増えたこと
- 学科試験免除の年数が延長されたこと
などが変更されました。
2-1.実務経験が免許登録要件へ
以前は実務経験が「受験資格」でしたが、「免許登録要件」になりました。
分かりやすく言うと、登録までに一定年数の実務経験を積めばいいので、合格してから実務経験、あるいは実務経験をしたのち、試験に合格、残りの実務を行ってから免許登録しても、選択が自由となりました。
変更後の各試験の受験資格は以下です。
木造建築士 | 大学、短大、又は高等専門学校指定科目卒業者:実務経験不要 高等学校又は中等教育学校指定科目卒業者:実務経験3年 都道府県知事が特に認める者:実務経験不要 建築設備士:実務経験不要 学歴なし:実務経験7年以上 |
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2級建築士 | ↑木造建築士と同じ。 |
1級建築士 | 大学、短大、又は高等専門学校指定科目卒業者:実務経験2~3年 高等学校又は中等教育学校指定科目卒業者:実務経験4年 都道府県知事が特に認める者:所定年数以上の実務経験 建築設備士:実務経験4年 二級建築士:実務経験4年 |
出典:建築士試験の受験資格が変わります!(公益社団法人建築技術教育普及センター)
2-2.実務経験要件として認められる範囲が広がる
以下太赤字箇所が、新たに実務経験要件として認められた項目です。
2-2-1.建築物の設計に関する実務
項目 | 例など |
---|---|
■建築物の特定の部分・機能に係る設計 | |
■基本計画策定に係る業務のうち、建築士事務所で行われる建築物の設計に関する図書の作成に係る業務 | (図書を作成するために必要となる直接的な業務を含む)例:設計与条件整理、事業計画検討など |
■建築士事務所で行われる標準的な設計を行う業務(単なるトレースである業務は除く) | 例:事務所内部で使用する標準仕様の作成、BIM部吊の作成など |
■解体工事に係る設計 | |
■建築積算関連業務 | (単なる計算業務を除く) |
2-2-2.建築工事の指導監督に関する実務
項目 | 例など |
---|---|
■法令に基づく法人による建築工事の指導監督に関する実務 | 例:住宅瑕疵担保責任保険にかかる検査業務(保険検査)、住宅性能表示制度における性能評価業務(性能評価)、独立行政法人住宅金融支援機構の適合証明業務(適合証明)、建築物エネルギー消費性能適合性判定業務(省エネ適判)など(単なる記録に係るものは除く) |
2-2-3.建築物に関する調査又は評価に関する実務
項目 | 例など |
---|---|
■建築士事務所で行われる建築物に関する調査又は評価に係る業務 | 例:既存建築物の調査・検査、調査結果を踏まえた劣化状況等の評価、建築基準法第12条第1項に規定する定期調査・報告など |
2-2-4.建築工事の施工の技術上の管理に関する実務
項目 | 例など |
---|---|
■以下の業種区分に係る施工の技術上の管理建築ー式工事、大工工事
以下のいずれも満たす工事
|
例:鉄骨工事、鉄筋工事、解体工事(4号建築物以外のものに限る)など |
■建築設備の設置工事に関する施工の技術上の管理の実務 |
2-2-5.建築・住宅・都市計画行政に関する実務
項目 | 例など |
---|---|
■建築行政※ | 例:建築基準法等に係る個々の建築物の審査/検査/指導/解釈/運用等に係る業務、法律に基づき行う認定・審査・判定を行う業務、建築物に係る技術的基準の策定業務など
※従前は、建築確認及び消防長、消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する実務のみが対象であった。 |
■住宅行政 | 例:建築物の性能向上等を図る補助金の審査業務、特定空家等の調査など(建築物に直接関係する業務に限る) |
■都市計画行政 | 例:市街地再開発事業、土地区画整理事業など(具体的な建築物の整備等に係る業務に限る) |
2-2-6.建築教育・研究・開発及びそのほかの業務
項目 | 例など |
---|---|
■建築土試験に係る全科目を担当可能※でありかつ設計製図を担当する建築教育の教員の業務 | ※所属長が該当性を証明 |
■建築物に係る研究 | (ただし査読を経て学会誌に掲載等されるなど、第三者による一定の審査を経て公表等されるものに限る) |
■建築士事務所で行われる既存建築物の利活用検討・維持保全計画策定の業務 | (ただし、建築物に直接関係する業務に限る) |
2-2-7.大学院の課程における実務について
「大学院における実務経験」については、以前は院内の研究が対象であったものが、平成20年より建築士事務所での経験に変更になっています。
ただし、対象実務を拡大するかわりに実務経験の証明は厳しくされ、実務経歴証明書について、発行者は管理建築士又は所属建築士、または法人による証明に限定され、実務経験内容もより詳細な申告を求められ、詳細記入の上押印します。
証明書の末尾には「虚偽の証明をした場合は、処分や告発の対象となり得る」と明記されています。
出典:初めて受験申込を行う際に必要な書類について 公益財団法人 建築技術教育普及センター
2-3.学科試験免除が3年から5年に延長された
学科試験免除は学科試験のみ合格している場合、製図合格まで一定の回数の学科試験が免除される制度ですが、こちらも法改正で要件が緩和されました。
従来学科試験に合格した建築士試験を含み3年目まで、2回学科試験免除でしたが、5年目まで、4回の試験のうち2回(学科試験に合格した建築士試験の設計製図試験を欠席する場合は3回)は学科試験を免除するよう変更となっています。
簡単に言いますと、1回の学科試験合格でチャレンジできる製図試験の回数=年数が増えたということです。
3.建築法改正の仕事内容への影響【保存図書・設計契約】
建築士事務所の開設者は一定の図書について15年間保存することが義務づけられていますが、保存する図書の内容が拡大されています。
前述のように、いままで除外されていた木造建築のものも含みすべての建築物について、配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、構造計算書等、工事監理報告書の保存が義務づけられました。
また、こちらは平成27年の改正ですが、延べ面積が300平米を越える建築物にかかる設計及び工事監理について書面による契約締結が義務付けられました。
それにともない契約書面には建築士法第22条の3の3に定める事項の記載された別紙の添付が必要となっています。
※添付書式の記載事項はこちらをご参照ください
建築士法第22条の3の3に定める記載事項 (ひたちなか・東海広域事務組合)
4.「建築士法改正」のまとめ
以上、「建築士法改正」というテーマで解説をしました。令和2年建築士法改正の概要は、理解をいただけたでしょうか?
冒頭にも書いたように、これらの改正内容は試験制度の変更・実務内容の変更にとどまらず、建築士の試験問題への出題も意識する必要があると考えるべきです。
関連法令と実務と試験は一体であるということを意識しましょう!
- 2020年施行「建築士法」改正は建築士人口の増加等を目的として行われた。
- 登録要件の緩和・実務経験対象の拡大・学科試験免除の延長の3つが骨子。
- その他図書保存内容の変更が主な改正点。
- 法改正は試験制度変更・実務変更・試験内容変更の3つに注意!
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出典:建築士法の一部を改正する法律(平成30年法律第93号)等について(国土交通省)
出典:建築士試験の受験資格が変わります!(公益社団法人建築技術教育普及センター)
出典:初めて受験申込を行う際に必要な書類について 公益財団法人 建築技術教育普及センター
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