建設業の作業ズボンの定番「ニッカポッカ」は長年にわたって幅広く定着してきました。

「ニッカポッカってどんなもの？」
「制服なの？現場で必ず着ないとだめ？」
「どこで買えるの？どんなブランドがあるの？」

作業服の定番という位置づけだったニッカポッカですが、最近は色々変化が起きているのです。気になりますね？

そこで今回は「ニッカポッカ」の最新事情を分かりやすく解説します。作業服ひとつからも、その業種の深い知識や、最新事情が見えてきます。ぜひ最後までお読みください。

1.ニッカポッカとは？【由来と歴史を解説】

ニッカポッカは建設現場、主に大工・とび職、その他内外装・設備関係の職人さんがはく作業ズボンです。屋外作業があって、高所・機械・重量物など危険と肉体的作業の伴う現場で仕事をする職人の服装として普及しました。

見た目の特徴は、足の部分が幅広くなっていて、裾の部分がすぼまっているか、足袋や作業靴の中に入れるようになっています。

実はこのニッカポッカ、最近作業服のワークマンがアウトドアやスポーツのファッションブランドとして展開する「ワークマン＋」で、おしゃれアイテムとして人気になったり、TVでモデルの森泉・森星姉妹が着こなしたりなど、ちょっと違うポジションができつつあります。

もっとも森泉さんの場合はガチのDIY自宅建設現場で、作業用としてピンクのニッカポッカを着用して生コンを流したり、壁の石膏ボードを貼ったりしているのですが。

1-1.名前の由来

もともとは、アメリカに移民したオランダ人の人たちの服装や、移民の名称と言われています。英語では「Knickerbockers」と表記され、ニッカーボッカーズと読みます。

1-2.歴史

当初の起こりは子供向けの短いズボンだったものが、大人用の野球、ゴルフ、スポーツウェアとして着られるようになり、スポーツウエアとして形も改良されていきました。

日本ではもともと軍服として使用され、戦後は登山服、その後は耐久性と機能性の良さから職人の作業着として着られるようになっていったものです。

作業服としてのニッカポッカは、日本の忍者や大工などの着物・股引きがルーツだという説もありますが、呼び名としてはニッカポッカが定着した形です。

ゴルフウェアーとしては、クラシックな装いとしてツイードのニッカーボッカーなどがありますが、作業服のニッカポッカは現場用に独自の進化を遂げ、材質なども違いますので、着てゴルフをするのは笑いを取る目的以外はNGです（ゴルフ場のドレスコードでアウトかもしれません。）

2.ニッカポッカを履くメリット

2-1.機能性が高い

ニッカポッカをめぐる服装＝子供服・スポーツウエア・軍服・作業服・・・・これらに共通して求められるのは、下半身が動きやすく、しゃがんだりしてもつっかえない機能性の高さです。

作業中に身体の動きを妨げず、無駄な力を使わないという利点があります。

2-2.危険察知センサーになる

下半身が狭小な箇所、危険個所を通る際に、足より太くなった布地の部分が先に障害物に触れるため、すぐ本能的にかわすことができます。ぴったりした服装では接触＝即事故となるため、それを回避することができるのです。

新米の職人さんはその感覚がまだつかめず、よく幅広の布地の部分をひっかけて破いてしまっているそうです。

2-3.高所作業の機能

高所作業の頻度が高いとび職の人は、慣れた人だとニッカポッカの布地に当たる風の感触、はためき方で風向や風の勢いを読んだりできるそうです。

また、左右に開いた足の布地は高所作業で身体のバランスを取りやすくする役割もあるといわれ、事実職人さんの中からは「普通の作業ズボンだと、高いところでバランスがとりにくくて怖い」という声もあるくらいです。

あまり布地が広すぎても風を受けすぎて危険になるため、とび職の人のニッカポッカは風の煽り防止でロング（幅広になった部分）が短めで、裾に近い部分は細いのが一般的です。

2-4.温度調整

拡がった部分は空気をたくさん含むため、気候の変化に強く暑さ寒さを和らげてくれます。暑くない＝汗をかきづらく、汗をかいても身体に布地がまとわりつきにくいため、その事でも身体の動きを妨げにくくなっています。

2-5.種類が多く選択肢が多い

横に幅広の部分の長さをロング、ロングの縦の長さを〇分と表現します。

ファッション面にこだわるからだけでなく、このデザインは自分の目的に合わせて機能が変わるので、ロング7分、ロング8分、超ロング～四超ロングなど、それぞれ様々な選択肢から選ぶことが出来ます。

色は、若い人ほど派手目な色を好み、白色はニッカポッカ・足袋ともに、親方が着るカラーというしきたりがあるそうです。

白は汚れが目立ちますが、仕事のできる慣れた職人さんはあまり服を汚さないため、その象徴なのか、名誉職のような意味合いがあるのかも知れませんね。

3.ニッカポッカ禁止の現場が増えた理由

実は近年、ここ数年とくに、大手ゼネコンを中心にニッカポッカ、足袋を禁止する企業が増えており、代わりに、平ズボン、鉄板プレートの入った安全靴になってきています。

これまで長年にわたって愛用されてきたニッカポッカと地下足袋、何が問題になっているのでしょうか？

3-1.イメージが悪いため

世の中にはニッカポッカの作業着で仕事をしている人に「怖い」「ガラが悪い」というイメージを持っている人もいるため、印象を変えようとする目的があるということです。

建設工事の作業現場は、規模の大小を問わず危険と背中合わせです。高所や高出力の作業機械、鋭利な道具と、「やばいものだらけ」の環境下、大音量の機械の動作音の中で指示や返事をやりとりするのです。

あいまいな動作や小さな声ではミス・事故・即命にかかわるケガにつながります。きびきびとした動きや大声が、ガラが悪い・怖いとなって作業着のイメージに結びついていたとしたら、それは誤解かも知れません。

※気性の荒い部分はあるかと・・・。

建設現場で殴り合う先輩たちを怒鳴りつけたのは、一番年下の女性現場監督（施工の神様）

3-2.事故に繋がる可能性がある

ニッカポッカの服装は慣れれば危険察知に繋がりますが、新人職人さんの中には慣れるまでにひっかけたり転んでしまって怪我をするケースもあります。

地下足袋は履くことで足の感覚が敏感になり、それも作業性や危険察知などに役立っているのですが、鉄板入りの安全靴の方が、足の上に落下してきたものには強いということにはなるでしょう。

現場の職人さんにきいたところ、「ニッカポッカは控えてほしい」という要望はすでに大手以外でも声として上がっており、「違うズボンでは危険で仕事にならない」と、現場監督と交渉中とのことでした。

永年続いたものを変えるのに、メリット・デメリットは双方必ずあります。願わくば、よくよく精査のうえオフィスの中だけで考えた意見で、現場の安全・作業効率・職人のプライドなどを大きく犠牲にすることのないようにしてほしいと思います。

いま、たまたま「近隣住民が怖がるから現場でニッカポッカ禁止が増えてる」ってツイート見た（いいねするの忘れて流れてった）んだけど、住民が怖がるからってのと引き換えに職人の安全性を捨てるの？なんか代わりのものあるのかな？

— shinichi nakagawa (@nakashin0423) July 17, 2018

4.ニッカポッカのブランド・購入可能場所【レディースも紹介】

ニッカポッカは、ワークマン・建デポなどの作業用品店で入手できるほか、楽天などのネット通販でも買えます。

職人さんの中には、仕事に対するプライドの証しとして作業着の機能性や仕立てにこだわる人もいます。ネット通販では裾やロングの実際の長さなど、身体に合っているかは判断が難しいところですね。

少し前に、海外観光客が日本の工事現場に行き合い、「オー！ニンジャ！」と現場の作業着にあこがれ、人気になった時期もありますし、若い人の中ではニッカポッカ姿にあこがれ、「一人前の職人になって立派になる」という目標になったりもします。

製造ブランドは関東鳶・鳳凰などいろいろある中、「らしいニッカポッカ」という意味では寅壱が有名です。

鳶衣料／ズボン／ニッカ（寅壱）

性別は男性用だけでなくレディースものも、作業用・おしゃれ用ともにあります。

5.「ニッカポッカ」のまとめ

以上、「ニッカポッカ」というテーマで解説をしました。ニッカポッカがどんなものかや、最新事情は、理解いただけたでしょうか？

建築設計や施工管理を仕事にしよう、資格を取ろうという人は、「現場を知ってなんぼ」というところがあります。ニッカポッカひとつとっても、「現場」や「実務」を知るきっかけとしてキャリアにつながる情報だということができると思います。

転職などお考えの方、資格を目指す方は、こういう観点に興味を持つのもよいことです。

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