宅建のクーリングオフ制度を分かりやすく解説!場所・期間・書式など条件はあるのか?
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「宅建業者が売主で、宅建業者以外が買主」となる不動産取引の場合、宅建業法では「8種規制」と呼ばれる8つの特別なルールが設けられています。「クーリングオフ制度」もその一つです。
「プロである宅建業者」と「素人である宅建業者以外」との取引をめぐっては、宅建業者に過度に有利な契約が締結されてしまう可能性が秘められています。そうした事態を回避すべく、消費者保護の観点から設けられたのが「8種規制」です。
クーリングオフ制度は、宅建試験でも毎年のように出題される重要テーマです。
そこで今回は、クーリングオフの概要と条件、実行するための方法をまとめました。
複雑な制度ですが、これを読めば細かいところまできちんと理解できるようになるはずです。
- クーリングオフ制度とは?
- クーリングオフができる条件
- クーリングオフをする方法
1.クーリングオフ制度とは【宅建試験】
宅建業法では「クーリングオフ」の制度が設けられています。
不動産物件の買い付けの申込みや売買契約について、一定期間の範囲であれば撤回したり解除したりできるという制度です。
これは、全ての不動産売買契約に当てはまるものではありません。売主が宅建業者であることや、契約場所が「事務所等以外」で行われた場合に限られる等の条件があります。
クーリングオフの意味や制定された背景など、順番に解説していくことにしましょう。
1-1.クーリングオフの意味と語源
まずはクーリングオフの言葉の意味から見ていきます。全日本不動産協会はウェブサイトで次のように説明しています。
クーリングオフの語源は、感情的な高ぶりを冷ますことを意味する「cooling-off」という英語です。
クーリングオフは「消費者保護」の観点から作られた制度です。
不動産の売買契約は金額が大きく、人生の中でも大きな決断です。
自らの意志がはっきりしないうちに契約をしてしまったり、強引な営業によって強制的に契約させられてしまうような事態は避けなければなりません。
そこで「頭を冷やすことで契約内容を再考する」という機会を提供しようということから、クーリングオフ制度が設けられました。
感情的な契約を避け、しっかりとした意思決定にもとづいた契約をサポートしようとするのが、クーリングオフ制度の趣旨です。
1-2.クーリングオフ制度が設けられた背景
不動産業界にクーリングオフ制度が設けられた背景には、歴史的な事情もあります。
かつて日本の不動産業界では、苦情や紛争など多くの問題が発生していた時代があります。
その原因は「意思表示や適切な判断がしづらい状況の中で契約を迫る」という、行き過ぎた営業手法にありました。
また、売主が宅建業者で買主が一般人の場合は、まさに「プロと素人との契約」になります。情報や知識、ノウハウの格差も大きく、消費者を守る必要がありました。
そこで1975年に宅建業法が改正され、クーリングオフが制度化されました。条文は次のとおりです。
第三十七条の二 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
2.クーリングオフ可能な条件【宅建試験】
クーリングオフは、全ての不動産売買契約に適用されるものではありません。
クーリングオフを行うには、以下の3つの条件があります。順番に見ていくことにしましょう。
- 契約した当事者は誰か?
- 契約した場所はどこか?
- 契約してからの期間は?
2-1.契約した当事者は誰か?
まず1つ目は契約の当事者についてです。売主が「宅建業者」であること、そして買主が「宅建業者以外」であることが原則です。
そのため「売主が宅建業者でない場合」や「売主も買主も宅建業者である場合」はクーリングオフの制度を適用することができません。
売主 | 買主 | クーリングオフ適用 |
---|---|---|
宅建業者 | 宅建業者以外 | ○ |
宅建業者以外 | ☓ | |
宅建業者 | 宅建業者 | ☓ |
2-2.契約した場所はどこか?
2つ目は契約の場所です。契約を行った場所によって、クーリングオフができる場所とできない場所があります。
これを「事務所等」と「事務所等以外」に分けて表記します。
2-2-1.契約が「事務所等」の場合
宅建業法によれば、「宅建業者の事務所等」で行った契約の場合はクーリングオフ制度が適用されません。
「事務所等」での契約であれば、顧客の意思決定は安定していると考えられるためです。
なお「営業所」や「案内所」の場合は、専任の宅建士や標識の設置が必要です。
守られていなかった場合は義務違反となるため、「専任の宅建士の設置義務違反」や「標識の設置義務違反」としての罰則を受けることになります。
しかし、もしそれらの義務が守られていなかったとしても、クーリングオフ制度の可否には影響しません。「事務所等」と見なされるため、クーリングオフ制度は適用されないことになります。
2-2-2.契約が「事務所等以外の場所」の場合
一方、「宅建業者の事務所等以外の場所」で行った契約については、クーリングオフ制度が適用されます。
具体的には、買主の自宅や勤務先、レストランや居酒屋などの飲食店などです。こうした場所では、購入者の意思決定が安定していない可能性があるためです。
ただし「買主の自宅や勤務先」が使われた場合でも、「契約に関する説明を自宅(もしくは勤務先)で受ける」との申し出が買主の側から発せられた場合なら、クーリングオフの適用は除外になります。
また「申込みの場所」と「契約の場所」が異なる場合は、申し込みの場所で決定します。表にすると次のとおりです。
申込みの場所 | 契約の場所 | クーリングオフ適用 |
---|---|---|
事務所等 | 事務所等 | ☓ |
事務所等 | 事務所等以外 | ☓ |
事務所等以外 | 事務所等 | ○ |
事務所等以外 | 事務所等以外 | ○ |
2-3.契約してからの期間は?
3つ目は、契約してからの期間です。クーリングオフ制度の趣旨は、「頭を冷やすことで契約内容を再考する機会」を提供することにあります。
しかし、いつまでもキャンセルが可能な状態では契約が安定せず、売主側も困ってしまいます。そこで、クーリングオフには有効期限が設定されています。
2-3-1.クーリングオフ制度を告知した日から8日間のみ有効
売主である宅建業者が「クーリングオフができること、およびその方法」についてを書面で告げた日を含めて8日が経過すると、クーリングオフはできなくなります。
そのためクーリングオフ制度を利用するには、その期限内に行う必要があります。条文は次のとおりです。
第三十七条の二
一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。
2-3-2.売主がクーリングオフ制度を書面で告知しなかった場合
なお「買主に対してクーリングオフの告知を行わなければいけない」という義務はありません。罰則の規定もありません。
しかし、告知をしなかったり、口頭で説明するのみで書面を提示しなかった場合は、いつまでたっても「8日間」という期限の起算が始まらないことになります。
そのため「物件の引き渡しを受け、かつ、代金の全額を支払う」(履行の完了)までの期限は、いつでもクーリングオフが可能な状態になってしまいます。
またクーリングオフ制度の趣旨は「消費者保護」が目的のため、特約によって8日間という期間をさらに延長することは可能ですが、8日間未満へと短縮する特約は無効となります。
3.クーリングオフをする方法
今度は、クーリングオフの実行方法を見ていくことにしましょう。
3-1.申請方法と効力
クーリングオフの意思表示は書面で行わなければなりません。証拠として残すため、一般的には「内容証明郵便」で送付するケースがほとんどです。
クーリングオフが効力を発するのは、書面を発した時です。「意思表示」が効力を発するのは一般的には「相手方に到達した時」ですが、クーリングオフでは、その制度の趣旨である「消費者保護」という観点から、発信主義が採用されています。
第三十七条の二
2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3-2.クーリングオフの書面について【記載事項】
クーリングオフの意思表示は書面で行う必要がありますが、書式に関してはとくに決まりはありません。
なお、東京都住宅政策本部が書式のサンプルを発表しています。ぜひ参考にしてください。
「不動産取引の手引き」6 契約を解除するときは | 東京都住宅政策本部
また内容証明については、差し出し方法や文書の作成方法が規定されています。詳細は日本郵便のウェブサイトを参照してください。
内容証明 – 日本郵便
内容証明 ご利用の条件等 – 日本郵便
3-3.効力発生の後は?
クーリングオフが行われると、売主である宅建業者は、すでに受領している手付金等の金銭を返還する義務が発生します。条文は次のとおりです。
第三十七条の二
3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
なお、クーリングオフにともなう損害賠償の請求や、違約金の請求はできません。条文は次のとおりです。
第三十七条の二 第1項後段
この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
そのため「クーリングオフが行われても損害賠償を請求できる」等の特約を結ぶこともできません。もし特約を結んだとしても、消費者保護の観点から無効となります。
4.「宅建のクーリングオフ」のまとめ
宅建業法のクーリングオフ制度について解説しました。
クーリングオフ制度は消費者保護の観点からも非常に重要な制度で、宅建試験でも毎年のように出題されています。
さまざまな規制があり複雑ですが、丸暗記をしようとするのではなく、ぜひ売り手と買い手の力学をイメージしながら理解するようにしてみましょう。
それぞれの立場を想像すれば、なぜこのような制度になっているのか、より簡単に理解できるようになるはずです。
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