不動産のデベロッパー業界は、国民の年齢構成の変化にともなう街づくりのニーズの変化への対応、日本の高度なノウハウを海外で発揮するチャンスの増加など、ますます目が離せません。

「自分はデベロッパーに向いてるのか知りたい」
「デベロッパーの仕事はきつい？」
「デベロッパーへの転職対策をしたい」

いま、このような考えをお持ちの方は多いかと思います。

デベロッパーとは何かを改めて表現すると、Developer＝開発者の名の通り、新規の宅地やマンション、中にはひとつの街そのものを企画・開発から管理まで手掛けるジャンルの不動産会社です。

既存の市街地の再開発や、リゾート開発などもデベロッパーです。

この記事では最新の情報をもとに、デベロッパー向きの人の特徴をはじめ上記のような皆さんの疑問や不安にお答えしていきますので、ぜひ最後までお読みください。

1.デベロッパーに向いてる人の特徴4選

では、どのような人がデベロッパーに向いている＝デベロッパーとして働くうえで、どのような事を心掛ければいいかを見ていきましょう。

デベロッパーの仕事内容の詳細については上記の宅建Jobチャンネルや、以下の記事もご参照ください。
不動産デベロッパーとは？仕事内容や将来性を解説

1-1.コミュニケーション能力が高い

デベロッパーが一つの現場で行う仕事の流れは以下です。

これらのプロセスのすべてで、「相手との交渉や説得」が必要になる点は、お分かりになると思います。

社内のネゴシエーションに始まり、地権者や周辺住民、建設会社や現場、分譲会社やエンドユーザー、管理組合と相手は変わっていきますが、常に付きまとうのが「コミュニケーション」です。

人付き合いをストレスにせず、相手にこちらの意図を十分に伝えていくのが日々の仕事と言って過言ではありません。

コミュニケーションは経験やスキルとして高めていけるものなので、キャリアを通して「相手の立場に立ちつつ、自分の立場を理解してもらう」方法を実践し、追及していくこととなります。

1-2.マネジメント能力が高い

マネジメント能力とは、コミュニケーションを通じて相手を動かし、管理する力です。

不動産の開発にはたくさんのお金と人の協力が必要になるため、不動産デベロッパーは予算やスケジュール、人材配置などのマネジメント能力が求められます。

建築やテナントの現場の仕切りなどでは、ときには分かりやすくリーダーを拝命していなくとも、若手の立場でマネジメントを行う場合もあります。

マネジメント能力を発揮するためには、常に俯瞰的な視点＝全体を見渡す目と、結論から逆算して考えることが重要です。

たとえば、ただ「工期を巻いてください」と相手を説得するだけでなく、そのプロジェクトに想定されるニーズやほかのプロセスとの連携を伝える＝「人の異動の動きが始まる1月には入居者募集をかけたい」という話をすることです。

チームワークを構築するのもマネジメントの仕事なのです。

ここは先輩の動きを注視し、質問をたくさんすることで経験不足を補います。

なんというか国内のデベロッパーはチーム開発のプロセスやマネージメント手法を疎かにしてきたツケを払わされている気がする。宮大工さんは一杯いるのに建築会社や設計事務所が少ない感じというか。。。

— みちばな (@mswar777) November 16, 2009

1-3.予想外の状況にも臨機応変に対応できる

不動産開発の現場はむしろすんなりと進むことの方が珍しいというくらい、想定外のことが起こります。

考えたプランで社内や地権者を説得できなかったり、プロジェクトの方向性が急に変わったり、建築資材や天候の関係でスケジュールが遅れてしまうなどが日常です。

うまくいかない方が普通なのですから、いちいちあわてる必要も暇もありません。常に冷静さと忍耐を保ち、ひとつの考えに凝り固まらずに、その時に応じた最適解をひねり出す修練を積みます。

経験値に比例して対応がうまくなるため、スキルアップを実感させられ、仕事の面白さを感じられる部分でもあります。

物件管理においての「火災」「水漏れ」「騒音」などのトラブルに関しては、マニュアル化された対処法があるので、事前に学んでおくこともできます。

1-4.自発的に学習できる

デベロッパーの主な仕事は土地開発ですが、その他に不動産売買や賃貸仲介、賃貸管理などの仕事も担当し、建築は行わなくとも企画からの発注やスケジュール管理は行います。

このように職域が非常に広いため、携わる部署によって、様々な学習や資格が役に立ち、それらを学ぶ意欲のある人が、デベロッパーに向いています。

自発的な学習の手段としては資格取得がおすすめなのですが、デベロッパーの仕事に向く資格については、後述します。

OJTでの先輩社員とのコミュニケーション、研修なども活用して学ぶ意欲を発揮しましょう。

※こちらの記事もご覧ください
デベロッパーへの就職や転職には資格が必要？宅建についても詳しく解説！

2.デベロッパーの仕事はきつい？

デベロッパー全般、一般的に思われているほどきつい仕事とは言えないです。
その理由として、

• ノルマをこなす営業はなく、自分で企画立案したりやり方を工夫できる仕事であること
• 残業が増えるのはサイクルがあり、プロジェクトが佳境の時期であること
• 仕事が厳しい局面もある分、待遇も整っていること

などがあげられます。実際に大手デベロッパーの花形的存在で、責任も業務量も多い三菱地所の口コミをご紹介します。

2-1.激務の時期があるのは本当【悪い口コミ】

まず、仕事のハードな側面を示す口コミです。

フレックス制度を導入しており、 時短勤務や育休制度の活用も可能ではある。 部署によって仕事量が大きく異なり、忙しい部では早朝から深夜までの労働が当たり前であるが、暇な部署では、年間残業時間が6時間ということもある。

 

(都市開発、企画、マネージャー、在籍10~15年、退社済み、中途入社、男性)
出典：三菱地所・ワークライフバランス– openwork

プロジェクトが佳境になる時期は、かなり残業が多い職場ですが、近年の環境改善努力は進んでいます。おおむね、オンとオフのきりかえはしやすい環境です。 子育て対応にも柔軟に接してくれる状況は多いようでした。

 

(20代 / 女性 / 企画・事務・管理系（経営企画、広報、人事、事務 他） / 退職済み / 正社員)
出典：三菱地所・ワークライフバランス– openwork

勤務時間・休日休暇：ランドマークタワー立ち上げの時期でもあったので、残業は凄かったですが、帰りのタクシーチケットも制限なく出ていたのと、残業代も全て頂けましたので問題ありませんでした。日付が変わる前に帰れない三ヶ月が続きました。

 

(20代 / 女性 / 企画・事務・管理系（経営企画、広報、人事、事務 他） / 退職済み / 正社員)
出典：三菱地所株式会社の働き方（勤務時間・残業・休日休暇・制度） – en Lighthouse

部署やプロジェクトの進行状況によって、女性でも忙しい時期があるのは事実のようです。

ひとつ言える事として、三菱地所は企業の評価バランスを示すレーダーチャートの形がいびつになるほどに、法令遵守の意識が特別に厳しい会社です。したがってこの10年ほどの間に、「仕事がハードで帰れない」という類の口コミは、どんどん減っています。

2-2.最近は労働環境が整ってきている【良い口コミ】

続いて、労働環境の良さの方を書かれた口コミです。

 

勤務時間・休日休暇:
ワークライフバランスを意識したい方にはとてもおすすめの会社です。
場所にもよりますが、 残業は少なめですし、 勤務時間外の業務対応もほぼありません。
休日出勤はほとんどないですし、長期休みを取ることも可能です。

多様な働き方支援:
比較的自由度は高い会社だと思います。
リモートワークも推進されていますし、 フレックス制度も導入させれているため、 早帰りも可能です。 副業制度も導入はされていますが、そこまで使用例はありません。

(回答者: 男性/総合職/ 現職(回答時) / 新卒入社/ 在籍21年以上/ 正社員)
出典：三菱地所株式会社の働き方（勤務時間・残業・休日休暇・制度） – en Lighthouse

年収事例：新卒4年目、26歳、年収600万円

給与制度の特徴：残業代は時間に合わせて正確にすべて出るが、昨今のワークライフバランス推奨の時世に合わせて、残業時間削減の方向性であるため、以前ほど残業代で稼ぐ、といった風潮ではなくなっている。年功序列の風習が残っており、どんなに仕事ができない人間でも、長くいれば給与は上がっていく。

［営業、在籍3～5年、現職（回答時）、新卒入社、女性、三菱地所］
出典：三井不動産vs三菱地所、業界最大手の社員満足度対決！ – DIAMOND online

勤務時間・休日休暇:
働き方改革に早くから取り組まれている。
部署によって残業はあるがブラックなことはなく、サービス残業はない。

多様な働き方支援:
テレワークやフレックス、 副業解禁など先進的で、会社も積極的に支援している。

(男性/総合職/ 現職(回答時) / 新卒入社/ 在籍16~20年 / 正社員 / 部長)
出典：三菱地所株式会社の働き方（勤務時間・残業・休日休暇・制度） – en Lighthouse

三菱地所の会社としての特性ですが、新入社員から生え抜きで長期にわたって勤務する例が多く、他社との比較を行える人が少ない傾向にあります。

それでも、ここまでの高評価が得られているのは特筆すべきことと言えるでしょう。

三菱地所、いい会社です pic.twitter.com/YOT7QxE9rX

— PuANDA (@shoichirosm) March 7, 2023

3.デベロッパーの年収が高い企業TOP3

それでは、デベロッパー企業の年収上位を見てみましょう。

出典：デベロッパー平均年収ランキング（セコカンプラス）

財閥系デベロッパーも抑えて、ダントツでヒューリックが1位となっています。

ヒューリックは東洋経済オンラインの10年間で｢年収が抜群に増えた｣会社ランキングでも1位となっており、不動産業界内でもその伸び方が注目を集めている会社です。

オフィスビルの賃貸・売買が多いにもかかわらず、コロナ禍での経常利益は2020年だけ5％ほど下げ、翌年からV字回復を示す強者ぶりです。

ヒューリックはみずほ銀行をはじめとする芙蓉グループである関係で資金力も持ち、都内の一等地に用地取得をし、そこに耐震性など付加価値の高い建物を作って、妥協のない開発ビジネスを進めてきたことに勝因があると言われています。

出典：10年間で｢年収が抜群に増えた｣会社ランキング（東洋経済オンライン）

このように、ベンチャーなどではなく王道ともいえる経営でここまでの業績の伸びを記録できるのも、不動産デベロッパーという業界の特徴と言えるかもしれません。

※こちらの記事もご参照ください。
不動産デベロッパーの平均年収ランキング！仕事内容と将来性を解説！

4.デベロッパーに就職・転職するには？

では、デベロッパーへの就職、転職はどのような点にしていけば良いのでしょうか？

4-1.大手への転職難易度は高い

特に大手の総合デベロッパーの場合ですが、中途採用の枠自体が少なく、難易度は高いと言わざるを得ません。

これは、該当するような企業は前述のように、新卒の生え抜き社員の長期雇用を前提とした人事システムで動いており、この牙城に分け入っていくことは難しいためです。

NHKのアナウンサーから三井不動産の開発企画部へ転職を成功させた近江友里恵さんは、大変なレアケースと言えるでしょう。
出典：元NHK近江友里恵が三井不動産に再就職！「ブラタモリ」に凱旋出演の可能性 – アサジョ

技術部門、もしくは系列会社に関しては、比較的転職による中途採用を受け入れる枠もありますので、そちらをターゲットにしましょう。

また、総合デベロッパーではなく、マンションデベロッパーや宅地開発などであれば、キャリア採用も幅広く行っています。

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4-2.新卒であればインターンに参加しよう

新卒でも大手の総合デベロッパーはかなりの難関です。学歴フィルターや学生時代の活動履歴・学業成績なども選考要因となっていると考えられており、高校卒業時点でレースは始まっているという意見すらあります。

新卒の場合、インターンシップへの参加を通して、会社側に認知してもらいやすくしましょう。インターンで高く評価された場合は推薦してもらえる可能性もあるため、有利となるうえ、会社の現場の雰囲気が分かります。

4-3.デベロッパーへの就職・転職に役立つ資格

以下のような資格が、デベロッパーとして働くうえで有利となる資格の代表例です。

宅建士	土地や建物の取引全般の知識を学べる。契約時の重要事項説明を行う独占業務、取引を行う場合一定数を雇用する必置義務あり。
不動産鑑定士	土地や建物の公的な価格査定が可能な資格。不動産活用のコンサルティングもできる。精密な価値判断が可能になる知識体系を学べる。
再開発プランナー 再開発コーディネーター	再開発プランナーは「都市再開発に関する専門家」の資格。再開発プランナー取得後5年間の実務経験で再開発コーディネーターを受験可能に。
土地家屋調査士	不動産の状況を正確に登記記録に反映することで不動産取引の安全の確保をする資格。調査や測量のスキルが分かる。
賃貸不動産経営管理士	賃貸住宅管理業法に基づく、不動産賃貸業全般に関する専門資格。建物管理やアセットマネジメントの位置づけなども分かる。
管理業務主任者	マンション管理組合に対しての契約業務、フロント業務の専門資格。マンション管理会社で必須となる。
ビル経営管理士	ビル経営に関する企画や立案、賃貸営業および管理・運営まで、ビル経営管理の専門家として必要な知識と経験を有しているとみなされる。

これらのほか、海外で活躍するのが希望の人はTOEIC、英会話など語学系のスキルを高めるのも良いでしょう。

会社も資格取得を奨励しており、資格を取得することで毎月の給料に資格手当が加算されたり、就業後に資格を取る場合は補助手当が支給される場合があります。

また、デベロッパーの仕事の本質には「全体の俯瞰」という側面があるため、今の仕事を充実させるために、今は直接関係のない資格を学んで効果を挙げることもできます。

※こちらの記事もご参照ください。
デベロッパーへの就職や転職には資格が必要？宅建についても詳しく解説！

5.「デベロッパー 向いてる人」のまとめ

デベロッパーに向く人の解説を中心に、ワークライフバランスや就職・転職対策についてご説明しました。

デベロッパーは商業施設、住居を含む大規模なものから大規模分譲まで、「街づくり」の仕事で充実したキャリアパスを築ける仕事です。

大手の総合デベロッパーが狭き門であることは確かですが、会社の規模や職種によってはチャンスがありますので、ぜひトライしていただきたいです！

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出典：三菱地所・ワークライフバランス– openwork
出典：三菱地所株式会社の働き方（勤務時間・残業・休日休暇・制度） – en Lighthouse
出典：三井不動産vs三菱地所、業界最大手の社員満足度対決！ – DIAMOND online
出典：デベロッパー平均年収ランキング（セコカンプラス）
出典：10年間で｢年収が抜群に増えた｣会社ランキング（東洋経済オンライン）