宅建試験の民法とは?おすすめ勉強方法・改正の影響を解説【過去問はどうする?】

宅建試験の科目の中で、比較的難しくて点の取りにくいといわれる「権利関係」分野

そのメインともいえる「民法」は、宅建を受験する人にとっては結構イヤな、敬遠されがちな部分です。

さらに、民法の中の「債権法」と呼ばれる部分が今年令和2年4月より改正となりました。

120年ぶりの民法大改正であり、連帯保証制度など宅建試験にも深くかかわる箇所なので、今年の試験では重要視されるとみられています

この記事では、宅建試験の「民法」で登場する法律の意味から、科目の攻略法、法改正の出題対応まで解説します。

この記事を読むと分かること
  1. 宅建の試験科目の中の「民法」ってどんなもの?
  2. 「民法」の法律の意味を知って、理解に役立てよう
  3. 「民法」の攻略テクニックは?【早めに対応を!】
  4. 「民法」の大改正対応は?

1.宅建の試験科目「民法」とは?【早めの勉強スタートを!】

宅建の試験科目「民法」とは?【早めの勉強スタートを!】

「民法」はどんな感じで出題されるのでしょうか?試験全体の中でのバランスや位置はどうでしょう?

1-1.「民法」の出題ウエイト

「民法」は宅建試験の「権利関係」分野の中の科目です。

「権利関係」を別名「民法等」と呼ぶくらいで、「権利関係」の出題14問のうち10問を占めます。

権利関係は「民法」以外に「借地借家法」・「不動産登記法」・「建物区分所有法」から4問が出題されることになります。

「権利関係」の出題順は50問中、問1~問14です。つまり答案用紙を開いて最初に目にするのが民法などの「権利関係」の出題です。(後述しますが、ここで素直に1問目から解きにかかってはいけません)

「権利関係」分野の得点目標は、一般的に14問中の7点から9点と言われています。民法だけで5点から7点というところでしょうか。

中には、「もう試験が近くなって仕上がってなかったら、民法はあきらめよう!」という方もいるかもしれませんが、おすすめしません。民法を全部落とした場合、残りは3問しか間違えられず非現実的です。

1-2.早めの勉強スタートで地道に!

「民法」は物と人、人と人の間での基本的なルールを定めた法律なので、出題範囲が広く、いくらでも難問をつくることができます。

したがってまる暗記だけでは対応ができず、問題を解くために「この場合はこうなる」という原則的な理解が必要になってきます。

難しいのですが、やりがいがあります。得点できるようになると、他の受験者に差をつけやすく、戦闘力は格段にアップします。

ただし、誰しも試験本番までに勉強に充てられる時間は限られますので、無理に深追いをせず他の分野の勉強が犠牲にならないよう、勉強を始めた早い段階からコツコツと地道に理解を深める勉強が重要です。

2.民法に出題される出題意図と範囲【目的を理解しよう】

民法に出題される出題意図と範囲【目的を理解しよう】

まず、「民法」の概要と用語など、ざっくりと見て理解をしましょう。

2-1.まずはこれ!民法の成り立ちと基本の「4つの原則」

民法も法律自体に目的に沿った構成と、原理原則があります。

民法の構成はまず総則以外を大きく2つのグループ「財産法」と「家族法」に分かれ、その2つがさらに2つづつ計4つに分類されます。その4つに「総則」を加えて5つのパートとなります。

5つとは、総則」・「物権」・「債権」・「親族」・「相続」です。

そして、民法は「権利能力平等の原則」「所有権絶対の原則」「私的自治の原則」「過失責任の原則」の4つの原則が基本となることを頭に入れておくのが重要となります。

これで、自分の中で「何のための法律?」というのを整理します。表で見ましょう。

「民法」の構成

総 則
民法すべての共通項の決まり
財産法
所有や売買、賃貸借などの財産関係の決まり
物権法
人と物との関係についての決まり
債権法
人と人との関係についての決まり(法改正)
家族法
夫婦・親子・兄弟姉妹の身分関係、死後の相続などの関係の決まり
親族法
婚姻、離婚、親子、親権などの決まり
相 続
死亡などによる相続、遺言などによる財産移転などの決まり

「民法」4つの基本原則

権利能力平等の原則 ・全ての人は、職業や年齢等により差別されず、平等に権利・義務の主体となることができる。
所有権絶対の原則 ・全ての人は所有権の対象である『物』を、自由に使用・収益・処分することができる。(物には不動産なども含まれます)
私的自治の原則 ・全ての人は、自由な意思により権利を取得し、自由な意思によらなければ義務を負わされない(これに則さないのが不法行為

・個人間で法律関係が可能。(契約などがこれにあたる)

過失責任の原則 ・他人に損害を与えた場合、「故意」「過失」の2つのいずれかあるいは両方がある場合にのみ、損害賠償責任を負う。

いかがでしょう?ちょっと全体像が見えてきませんか?

民法の世界で「債権」という言葉は借金などイメージしやすいものだけでなく、人が人に対して行使する権利なんですね。

「民法」の勉強にとりかかって最初のうちは、「なんでこれが原理なんだかわからない!」という状況だと思いますが、理解が進むうち、必要なものだと理解されます。

正誤の判断に迷った時に「あ、この選択肢は私的自治に反するな」というケースが出てきます。

どんな法律もそうですが、原則に対して例外というのがあります。しかし上記のような原則を理解しないと例外も頭に入っていかないのです。

2-2.最初に押さえる!民法の法律用語例

勉強を始めた最初のうちは、ふだんの生活で使わない法律用語に戸惑うと思います。

民法の基本、かつ特殊な用語の例についてみてみましょう。

「対抗」:対抗できる=主張できる
「善意」その事柄を知らない状態
「悪意」その事柄を知っている状態
「第三者」:最初の法律関係に直接関与しない人
「故意」:わざと、知りながら
「過失」:不注意のこと
「無効」:契約に最初から効力が生じない
「取り消し」:契約は有効だが、それを初めにさかのぼって無効にする
「代理」:本人に代わって契約できる権限

この他にもまだありますが、普段の生活で使う言葉でも、法律上は少し違う意味で使われるというのがお分かりになるでしょうか。

3.宅建の試験科目「民法」は難しい?【優先順位の付け方】

宅建の試験科目「民法」は難しい?【優先順位の付け方】

暗記だけでなく理解が求められる民法の学習は、深入りしすぎは禁物です。

深入りとは先述のように他の科目に割く時間を犠牲にすることです。

しかし民法を中心に権利関係で14問と出題数は多いということで、対策は必要になります。

3-1.民法学習の優先順位は?

民法以外の4問も含むと14問と、「宅建業法」の次に出題ウエイトが高いのが「権利関係」分野ということになります。

民法部分の出題範囲をもう少し詳しくご紹介し、頻出部分や学習のコツをお伝えします。下の表をご覧ください。

(◎=最優先 〇=優先 =法改正関連)

項目名 重要度
総則 一般条項
制限行為能力等
意思表示
代理
条件・期限
時効
物権 占有
相隣関係
共有
地上権
地役権
先取特権
質権・留意権
抵当権
対抗問題
債権 債務不履行
保証
連帯保証
債権譲渡
弁済・相殺等
債権者代位権・詐害行為取消権
同時履行の抗弁権
契約の解除
危険負担
手付
買戻し
売主の担保責任
賃貸借一般
使用貸借 消費貸借
請負・贈与
委任
不法行為
不当利得
その他
相続・遺言

まず印のついている、頻出するものを意識してください。

債権法部分で法改正関連がかなりたくさんありますね。しかもここで重要度に印のないものは「流して大丈夫!」ということは全くありませんのでご注意を!

3-2.難問対策

宅建試験にひっかけ問題はつきものですが、「民法」の場合は、ひっかけとは違う複雑さと向き合う必要があります。

どんな複雑さでしょう? 具体的に過去問を見てみましょう。

過去問の例
(2007年 問1)
A所有の甲土地についてのAB間の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3. Aが第三者Cの強迫によりBとの間で売買契約を締結した場合、Bがその強迫の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはAB間の売買契約に関する意思表示を取り消すことができる。

まず、他の科目の設問より、選択肢ごとの文章が長いんです。読み込んで瞬時に整理が必要です。

心裡留保と意思表示に関する問題で、この肢3は正解なのですが、正解するにあたっては、第三者に対抗できないという通常のセオリーに対して、強迫という不法行為が例外となるかを理解している必要があります。

過去問の例
(1990年 問4)
A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。民法の規定によれば、次の記述は正しいか。
3. Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは重大な過失がないときは、AB間の契約の無効を主張し、Cに対して所有権を主張することができる。

無効と取り消しを扱った問題でこの肢は正解ですが、これを解くためには、以下の知識を要します。

  1. 錯誤無効の要件は、「表意者に要素の錯誤があり、契約時に気がつかなかった」「錯誤について重過失はなかった」の2つ。
  2. 原則として、錯誤無効の主張は、表意者本人しかできない。
  3. この無効の主張は、善意の第3者にも対抗できる。(第3者が善意無過失でも同じ)
  4. その第3者が「所有権移転登記」をしていても、表意者は対抗できる。

※このほか「代位による弁済」について、債権者の同意が要件とされていたものが債権法部分の改正により、法定代位の場合と同様に任意代位をする際に債権者の同意が不要となったことにつき、改正点を絡めた出題に注意をしましょう。

4.民法大改正の試験への影響は?【過去問の正答が変わる!】

民法大改正の試験への影響は?【過去問の正答が変わる!】

2020年4月1日、120年間ほとんど改正がなかった「民法」が改正施行されました。

改正されたのは宅建の試験にもかかわりの深い「債権法」と呼ばれる部分で、200項に及ぶ点が改正になっています。

これはもう、今年の試験から改正部分が出題されるのは間違いないわけです。
最初に対策の要点を挙げます。

民法改正対策の要点
  • 改正部分が試験の出題にどのように影響するかしっかり把握。
  • 過去問は正答が変わっているものがあるので、要注意!
  • テキスト等教材は必ず新しいものを。

4-1.法律用語や法律規定の変更に注意!

法改正のうち宅建試験に具体的な影響のありそうな項目をご覧ください。

※この表は暗記する性質のものではありません。目を通したあとは、過去問の該当箇所を確認する際などに参照しましょう。

錯誤 改正前:無効

改正後:取り消し

代理 改正前:帰属者が制限行為能力者かつ法定代理人も制限行為能力者だった場合⇢取り消しできる

改正後:制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為⇢取り消しできる

時効 改正前:職業別の年数が異なる、商事時効5年

改正後:全て統一して

  • 権利者が権利を行使できることを知った時から5年
  • 権利を行使できる時から10年間

に変更。

  • 時効の「中断」⇢「更新」
  • 時効の「停止」⇢「完成猶予」
弁済 改正前:

  1. 「利害関係を有しない」第三者は債務者の意思に反して弁済することはできない。
  2. 債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むこ とができない。

改正後:

  1. 「正当な利益を有する者でない」の弁済が債務者の意思に反する場合であっても、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときには、その弁済は有効とする。
  2. 「弁済をするについて正当な利益を有する者以外の第三者」 は、債権者の意思に反して、弁済をすることができない。
債務不履行解除 改正前:債務者に帰責事由がない場合には解除が認められないと定めている

改正後:債務不履行による解除一般について、債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても解除を可能なものとする。ただし、不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合には、解除はできない。

連帯債務 改正前:連帯債務者1人に対して行った履行の請求は他の連帯債務者にも効力が生ずる

改正後:他の連帯債務者には効力は生じない。各々に履行の請求をする必要がある

賃貸借契約 改正前:民法での契約期間の上限は20年

改正後:民法での契約期間の上限は50年

瑕疵担保責任 改正前:1.「瑕疵担保責任」

改正後:1.「契約不適合責任」

2.追完請求、代金減額請求が明文化された。

譲渡契約 改正前:譲渡制限特約のある債権の譲渡は無効

改正後:悪意重過失でない限り有効 ※悪意かつ重過失の場合、譲受人から履行を請求されても、債務者は拒絶または譲受人に弁済することを主張可能。

4-2.過去問の正答が変わる!

法改正の影響は過去問にも及びます。2019年まで正解だった問が、2020年には不正解になる例も出てくるのです。注意が必要です!

正答の変わる例1
(2017年 問7)
A、B、Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、A、B、Cの負担部分は等しいものとする。

  1. DがAに対して履行の請求をした場合、B及びCがそのことを知らなければ、B及びCについては、その効力が生じない。

(2017年 宅地建物取引士試験問題)

2019年まで:誤り
2020年より:正しい

⇒ 「履行の請求」に絶対的効力がある(=他の連帯債務者に影響する)点は、改正によって削除。したがって(知っているかどうかにかかわらず)効力が生じないため正しい。(440条) 

正答の変わる例2
(2018年 問7)
債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者が、その特約の存在を知らなかったとしても、知らなかったことにつき重大な過失があれば、当該債権を取得することはできない。

(2018年 宅地建物取引士試験問題)

2019年まで:正しい
2020年より:誤り

⇒ 改正により債権譲渡は、譲渡制限の意思表示があったとしても有効となったため(466条)

正答の変わる例3
(2016年 問1)
次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。

  1. 債務の不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する旨

(2016年 宅地建物取引士試験問題)

2019年まで:誤り
2020年より:正しい

⇒ 債権は「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」時効により消滅する(166条)。但し、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、改正民法の167条で20年間とされた。

5.宅建試験「民法」の攻略法【テキストや法改正対応】

5-1.過去問

宅建の学習で過去問を避けて考える事は難しいです。

ただし今後民法に関しては改正点を常に意識しなければなりません。なにせ答えが変わっているわけですから。法改正対応済みの過去問解説を早く入手して準備を整えてください。

5-2.テキスト

時間に余裕のある段階から、宅建試験用・民法単独で書かれた条文解説を勉強するのも、本質的な理解で解答力をアップするには効果的です。

通勤時間といえば暗記勉強や過去問の単肢解説が主流ですが、このテキストは電車の中で条文の解説を対話式で学ぶものです。法改正にも対応し、kindle版で安価なのも魅力ですね。

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5-3.その他

とにかく「民法」は効率的な勉強法というのが難しい科目ですが、特有の言い回しに少しずつ慣れながら、論理的な思考を心がけるのが得点へのコツになります。

論理的な思考とは、「その決まりの目的・理由が何なのか」を常に考えながらテキストや問題を読むくせ」ということです。

また、もうひとつ理解を進めるために重要なのは、法令や判例の小難しい言い回しを、意味を間違えないように気をつけながら、普段着の表現に柔らかく変えてみたり、図にしてみることです。法律の専門用語は難しいですが、普段の暮らしのためのものです。事件は現場のものなんです。

また、モチベーションを保つためにも、民法の中で得意な箇所を作るのをおすすめします。「できる箇所」を作れば砂漠のオアシスのように、やる気を維持する元になりますよ。

日頃から丁寧に考えて解くことが要求される「民法」の問題ですが、試験の本番も民法ほか「権利関係」部分は、他の暗記対応できる科目を先に解いたあとで解くようにしましょう。

6.「宅建の民法」まとめ

宅建試験の民法とは?おすすめ勉強方法・改正の影響を解説【過去問はどうする?】

以上、宅建試験の科目「権利関係」の中の「民法」について解説をしました。

範囲も広く難しいけど、攻略法はある!やりがいがある!と感じて頂けたでしょうか。

宅建試験の「民法」について 本記事のポイント
  • 「民法」は物と人・人と人との関係を定める法律
  • 「民法」は5つの構成・4つの原則・優先順位が重要
  • 「民法」の攻略は図に書いて理解。深入りは禁物。
  • 「民法」大改正の準備は抜かりなく!

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