地上げは違法?用語の意味や儲けの仕組み・嫌がらせの手口も!
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「地上げ屋」というと悪いイメージをもつ人も多く、中には反社会的な仕事のようにとらえる人もいます。しかし、実際のところ「地上げ」の詳しい内容を知っている人は多くないのではないでしょうか。
そこで今回は、地上げの意味や目的、具体的な業務内容、地上げの種類や行政機関が行う地上げも紹介します。
地上げは、ヤクザや暴力団が行うビジネスというわけではありません。この記事を読めば「地上げ」が不動産業の中でも欠かすことのできない重要な業務であることが理解できるはずです。
この記事・サイトの監修者
棚田 健大郎
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、行政書士、FP2級など多数保有
不動産業界歴10年以上。元上場企業不動産会社エイブルの営業マン。3000人の社員の中で、仲介手数料売り上げ金額第1位となるトップセールスを記録。個人のYouTubeチャンネル“棚田行政書士の不動産大学”では、登録者数20万人以上。
この記事・サイトの監修者
棚田 健大郎
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、行政書士、FP2級など多数保有
不動産業界歴10年以上。元上場企業不動産会社エイブルの営業マン。3000人の社員の中で、仲介手数料売り上げ金額第1位となるトップセールスを記録。個人のYouTubeチャンネル“棚田行政書士の不動産大学”では、登録者数20万人以上。
1.地上げとは?具体的な仕事内容
「地上げ」と聞いて、暴力団やヤクザがからむ恐ろしいイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし本来の地上げは、まっとうな不動産事業の一つです。つい誤解されがちな「地上げ」ですが、まずはその具体的な仕事内容から解説しましょう。
また「恐ろしい」というネガティブなイメージがあるのは、バブル時代に過激な手口が横行したことも影響しています。その当時の内容についても紹介します。
1-1.地上げの仕事内容は?
「地上げ」とは、さらなる土地の有効活用をはかる目的で、一定範囲の土地を買い集めることをいいます。
「狭い土地」だと活用できる範囲は限定的ですが、「広い土地」ならさまざまな用途で利用することが可能になります。その結果、土地の資産価値も上がります。
このように、より大きな建物を建てるという目的や、再開発を行って街の効率化をはかることなどを目的として行われるのが一般的です。
とはいえ、地主に「売ってください」とお願いしたところで、すぐに売ってくれるとは限りません。粘り強い交渉力やコミュニケーション力、関係者との信頼関係の構築や、断られても諦めない強いメンタルも必要です。
また、物件の中には複雑な権利関係になっているものもあります。例えば以下のような物件です。
- 適切な登記がされていない
- 所有者が見つからない
- 通常の所有権ではなく、借地権や地上権が設定されている
- 入居者が立ち退いてくれない
- 所有者が複数いて、共有者との関係性が不安定
「地上げ」で行うことは「土地や建物の買い取り交渉」だけではありません。上記のような権利関係を整理したり、立ち退きの交渉をしたりと、業務の内容は幅広いです。
また、さまざまな法律や許認可なども関わるため、ハイレベルで専門的な能力を要するのも特徴です。
1-2.地上げの5つのパターン
「地上げ」には、さまざまな種類がありますが、ここでは5つのパターンを紹介します。これを読めば「地上げ」がより身近に感じられるはずです。
- 広い敷地を確保するために、土地を買い集める
- 建て替えのため、入居者に立ち退きをお願いする
- 再開発不可の土地や、形状の悪い土地の隣地を買い取り整備する
- 底地権と借地権を一体化させて、所有権化させる
- 公共事業のために行政機関が土地を買収する
1-2-1.広い敷地を確保するために、土地を買い集める
まず1つ目は「広い敷地を確保するために、土地を買い集める」という地上げです。
会社が本社ビルを建てる場合や、新たに工場を建てるというとき、一定の広さの土地が必要になります。また、不動産会社や建設会社がマンションやアパートを建設する場合もそうです。
しかし、希望エリアに必要な広さの敷地が簡単に見つかるとは限りません。広い敷地が存在せず、狭小物件の集まったようなエリアなら、買い集めて一つにまとめなくてはなりません。これも「地上げ」の一つのパターンです。
1-2-2.建て替えのため、入居者に立ち退きをお願いする
2つ目は「建て替えのため、入居者に立ち退きをお願いする」という地上げです。これは、とくに立地条件の良い賃貸マンションや賃貸アパート、駅チカのビルなどによくあるパターンです。
ビル内に複数のテナントがいる場合、建て替えを行うには退去してもらう必要があります。「立ち退き料」を支払うことで退去してもらうわけですが、いつまでも居座られてしまうというケースもあります。
もし交渉が長期化すれば、オーナーは建て替えができずに困ってしまいます。修繕費用がかさむ一方、賃料収入も下がるのでお金が回らなくなるためです。
地上げ業者は、こうした物件に目をつけ買い取り、入居者と交渉をして退去してもらいます。これも「地上げ」です。
更地にして転売することもあれば、みずから建物を建てて賃貸するケースもあります。隣地の買い増しにも成功すれば、土地の価格はさらに上昇します。
1-2-3.再開発不可の土地や形状の悪い土地の隣地を買い取り整備する
3つ目は「再開発不可の土地や、形状の悪い土地」に目をつけた地上げです。
「再開発不可」の土地とは、新たに建て替えができない物件のことをいいます。都市計画区域内で建物を建てる場合、建築基準法上の「道路」(原則として公道など幅員4m以上)に、2m以上接していなければなりません。
これを「接道義務」といいますが、この規定をクリアできない物件は建て替えをすることができません。つまり再開発ができないため、資産価値はかなり低いものになります。
しかし、もし隣地と合わせることで基準を満たせば「再開発可」になります。これによって資産価値が上がります。
また、地形が悪い物件も同様です。地形が悪いと建築コストは高く付きます。しかし、もし隣地を購入して地形の形が良くなれば、より低いコストでの建築が可能になります。結果として土地の価格は上昇します。
1-2-4.底地権と借地権を一体化させて、所有権化させる
4つ目は「底地権と借地権を一体化させて、所有権化させる」という地上げです。
借地権付きの物件は、その利用者(土地の借り主)である「借地権者」と、地主(土地の貸し主)である「底地権者」で構成されています。
法律では「借地権者の権利」が強く守られているため、地主は自由に土地を活用することができません。そのため資産価値は市場価格より低くなります。
しかし底地権と借地権が一体化すれば、通常の土地と同様の資産価値にまで回復します。「底地権や借地権を買い取ることで資産性を上げる」というのも「地上げ」の一つになります。
1-2-5.公共事業のために行政機関が土地を買収する
最後に紹介するのは、行政機関による地上げです。
地上げというと民間企業の行為と思うかもしれませんが、行政機関が「まちづくり」を目的に用地買収を行うこともあります。
たとえば「土地区画整理事業」や「市街地開発事業」などが該当します。これらもまた「地上げ」の一つです。
ただし民間の地上げは交渉によって価格が決まりますが、行政による地上げの場合は「用地補償基準」で決められた価格でなければいけないという制約があります。
また交渉がまとまらない場合、土地収用(強制的な取得)にまでエスカレートする場合もあるのが「公による地上げ」の特徴です。
1-3.バブル時代の地上げ屋の過激な手口
「地上げ」というと「暴力団や反社会的な人が行うこと」といったネガティブな印象をもつ人もいます。主な原因は、バブル時代の過激な手口にあります。
ここでは具体的な内容を紹介するとともに、その後の法整備について解説します。
1-3-1.過激な手口の内容と背景
当時よく言われた過激な手口としては、たとえば次のようなものがあります。
- 暴力団が家の前を徘徊する
- わいせつな内容や悪質な文章の貼り紙をされる
- 連日訪問して「立ち退け」と恫喝される
- ダンプカーで突っ込む
- 地上げで取得した隣地にニワトリ小屋やドーベルマンの犬小屋を設置する
- 放火される
- 動物の死骸を置かれる
- 植木鉢が撤去される
- (借家人の場合)老朽化による耐震検査を受けるよう求められる
- (借家人の場合)家賃の高額な値上げや物件の買い上げを要求される
こうした強引な行為が行われたのは、期限内に追い出すことができなければ報酬が減額されたり、もらえなくなってしまったりという事情があったようです。
豆知識火事で借地人の建物がなくなれば、借地権も消滅します。また家が破壊され、借地人が建て替えを希望する場合、地主の承諾が必要です。
しかし破壊や放火など、犯罪によって壊された場合は、地主の承諾がなくても建て替えが可能です。
つまり彼らの犯罪行為は「借地権者の追い出し」を困難にしているだけなのですが、逆に言えば、暴力団の側にも「早期に追い出さなければいけない」との大きな焦りがあったことがわかります。
1-3-2.悪質な地上げに対する法整備
また当時の問題点は、必ずしも法律がきちんと整備されていなかったことです。そのため、数々の嫌がらせに参ってしまい、泣く泣く売らされてしまった地主もいたようです。
なお今日では法の整備が進んでいます。たとえば「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」では、暴力団員による以下の点が禁止されています。
- 不当な地上げをする行為
- 土地・家屋の明渡し料等を不当に要求する行為
- 宅建業者に対し、不当に宅地等の売買・交換等を要求する行為
- 宅建業者以外の者に対し、宅地等の売買・交換等を要求する行為
また「宅地建物取引業法」は、弱いものを守るというスタンスが貫かれています。何か問題があれば、一般人(弱者)よりも不動産業者(強者)のせいにされるのが原則です。
法整備が進んだ結果、もはや「地上げ」は、クリーンなものになっていると言ってよいでしょう。
2.地上げの進め方・契約方法
「地上げ」の具体的な仕事内容を解説してきましたが、今度は「地上げ」の目的や具体的な進め方を見てみることにしましょう。「地上げ」の契約形態なども紹介します。
2-1.地上げの目的・形式
まず地上げの目的・形式は、大きく分けて次の2つです。
- 自社の事業展開のために地上げを行う
- 他社から依頼を受けて地上げを行う
2-1-1.自社の事業展開のために地上げを行う
自社の事業展開としては、ビルやマンションの建設があります。たとえば「本社ビルの用地を確保する」という目的で、いくつかの物件をひとまとめにするということが行われます。
また「分譲マンションや賃貸マンションを建てる」ためには、一定の広さの土地が必要です。この場合も、複数の土地をひとまとめにするための地上げが行われます。
いずれも「地上げ後の事業」の利益のために行われるものです。
2-1-2.他社から依頼を受けて地上げを行う
一方で、他社から地上げの依頼を受けることもあります。
たとえば「自社ビルの拡張のため、周辺の土地をまとめてほしい」とか「マンションを建て替えたいので、借家人の立ち退き交渉をお願いしたい」というものがあります。
また借地権をもつ個人が「底地を買い取りたいので地主と交渉してほしい」といった案件もあります。
目的としては、「地上げ後の事業のため」ではなく「地上げそのもの」で利益を上げるというパターンになります。
2-2.地上げの進め方
地上げの進め方は会社によって、また案件によっても異なります。ただし多くの場合は「プランニング」からスタートします。
地上げの目的は、複数の土地や複数の権利をとりまとめることで、さらなる価値を生み出すことです。そこで、まずはターゲットとなるエリアや物件を定めます。
その後、
- どうしても入手しなければいけない物件
- できれば入手したいが、入手できないなら代替手法を検討可能な物件
- 入手できなくても良いが、入手できると価値の向上につながる物件
といったように分類をした上で、それぞれの物件について登記簿謄本を取得、さまざまな現地調査も行います。
その後、郵送による挨拶や直接の挨拶を行い、買取や立ち退き向けた交渉がスタートするという流れです。
近年の「地上げ」は丁寧に行われることがほとんどのため、バブル時代に横行したような荒々しい手法をとる業者はありません。
ただし、「取得できた土地があれば、積極的に更地にしたり駐車場にしたりする」など、周りの地主にプレッシャーをかけるということはあるようです。
2-3.地上げで利益を得る2つの方法
地上げで利益を得るには、次の2つの方法があります。
- 自社で地上げを行い、権利をとりまとめて転売する
- 他社のために地上げを仲介し、買収ごとに手数料を得る
2-3-1.自社で地上げを行い、権利をとりまとめて転売する
自社で地上げを行う場合は、転売の差益が利益となります。たとえば以下のとおりです。
- 土地を買い集めて、更地にして一括して転売する
- 広い土地を確保して、分譲マンションや賃貸アパートを建てて収益化する
狭い土地や権利が複雑になった物件の場合、市場より安価に取得できます。そして、まとまった土地に仕上げることができれば、市場より高価な物件に様変わりします。
しかし、すべての用地買収が完了するまでには長い時間がかかります。そのため「お金を得るまで時間がかかる」というデメリットがあります。
大きな利益が期待できる方法ですが、地上げが完了するまで投下資金が寝てしまうため、資金繰りに余裕のある会社でないと行うことができません。
2-3-2.他社のために地上げを仲介し、買収ごとに手数料を得る
もうひとつは「仲介」です。地上げの依頼を受けて、買収の交渉を進めていくパターンです。
この場合は契約形態にもよりますが、1件の買収が成功するたびに手数料を受け取ることができます。
資金繰りの心配はありませんが、「転売差益」ではなく「手数料」となるため、大きな利益を狙うことは難しくなります。
3.地上げをおこなっている不動産会社
「地上げ」の仕事内容や業務の進め方、契約方法について解説してきました。
「地上げ」にネガティブなイメージをもつ人なら「地上げを行っている不動産会社なんて、今でもたくさんあるの?」と思う人もいるかもしれません。どんな不動産会社が地上げを行っているのでしょうか。
3-1.地上げは不動産業界では一般的なこと
そこで「地上げを行っている不動産会社」を紹介したいところですが、特定の会社を列挙するのは困難です。
なぜなら、そもそも地上げは合法的で、業界では一般的なことです。また都市の開発や再生、不動産の価値向上のために「地上げ」は必要不可欠なものです。
そのため、不動産会社や開発業者、建設会社など、さまざまな会社が業務の一貫として「地上げ」を行っているというのが実態です。
3-2.東証一部で地上げを扱う会社も
参考までに、地上げを主要なビジネスとしている東証一部上場企業を紹介しましょう。
株式会社サンセイランディック(証券コード3277)という不動産会社で、借地権における「底地」を扱う唯一の上場企業と言われています。
底地・借地権・古アパートの買取りや底地管理のことならサンセイランディック
サンセイランディックのメインビジネスは、権利関係が複雑な不動産を買い取って、権利調整をした上で再販することです。
中でも「底地を買い取ってから、借地権者に売却する」ことを得意としており、年間400件前後の底地を購入し、1年から10年をかけて売却するという実績が掲げられています。
借地権の地上げの場合、一般的には「底地と借地権を買い上げてから、所有権化して更地にする」という方法がとられます。
しかし同社は「底地を買い上げてから、借地権者に売る」という手法をとっているのが他社と異なる点です。
詳しいことに興味がある人は、以下のインタビュー記事を参考にしてみてください。
年間400件の借地権が付着している土地(底地)を購入 売却には10年以上をかけるケースも 日本一の地主業は、親切丁寧な対応で信頼を獲得|不動産活用ネットワーク(フドカツ)オフィシャルページ
4.「地上げ」のまとめ
不動産業における「地上げ」について解説してきました。「地上げ」にはネガティブなイメージがつきまとうこともあって、その実態はあまり良く知られていません。
今回の記事では、地上げの意味や目的、具体的な業務内容、地上げの5つの種類などについて紹介しました。
地上げが反社会的勢力のビジネスだった時代は過去のものとなりつつあります。また「地上げ」は不動産業界の中でも専門的で高度な能力を要する大事な仕事です。興味を感じた人は、ぜひさらに調べてみることをおすすめします。
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