不動産会社に支払う仲介手数料をわかりやすく解説【宅建業法・上限・計算・消費税】
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不動産業者の報酬「仲介手数料」。売買でも賃貸でも、不動産取引に発生する仲介手数料は、消費者保護のために、上限を細かく定めたルールで構成されています。
「仲介手数料って複雑で整理できない!」
「最近仲介手数料無料!ってきくけど、不動産屋さんはタダ働きなの?」
タダ働きにはなりませんが、宅地建物取引士試験=宅建試験でも重要視され出題される仲介手数料は基本、「いくらになる?」と金額を導き出す形を問われ、その根拠の整理が必要です。
今回は「仲介手数料」を分かりやすく解説します。不動産業の報酬の基本を覚えて、試験でもしっかり得点しましょう。
- 宅建試験に出る「仲介手数料」はどうして色々な決まりがあるの?
- 「仲介手数料」はどうやって計算?
- 色々なケースで「仲介手数料」がどうなるのか知りたい。
目次
1.宅建の仲介手数料とは?【報酬の上限あり】
不動産会社の収益源として、「仲介手数料」があります。もちろんそれが全てではないのですが、買う、借りるお客様から頂く報酬は仲介手数料がメインです。
この仲介手数料は基本、成功報酬制なので、契約が成立して初めて支払われることになります。テレビなどで、アパート探しに来たお客様の条件をきき、希望のお部屋を内見案内にお連れして、半日かけたりしますよね。
それで、お客様に「やっぱりいいです」と断られた場合、これは1円にもなりません。
成約することで初めて仲介手数料が発生するのですが、成約後に買主の意向や過失で契約が破棄になった場合でも、仲介手数料の請求が認められるメースもあります。
最近は競争も過当になってきて、会社によっては競合と差別化するためにより割引をしたり、無料にするケースもあります。
この最初から無料や割引をうたうケースでは「タダ働き」になることはなく、売主から報酬を得ているか、自身が売主で、販売利益が報酬となっているケースです(自身が売主の場合、仲介や代理ではないのですから仲介手数料は請求できません)
ていねいに順番に覚えていけば難しくなく、「得点源」というよりも、「落としてはいけない」設問と言えそうです。
1-1.片手と両手の違い
一般消費者になじみのない言葉として、仲介手数料の「片手」「両手」があります。片手は「売主」「買主」どちらかからのみ、両手は「売主」「買主」双方から仲介手数料を報酬として受け取ることです。
この「両手」は報酬としては魅力的ですが、あまり「両手」を狙いに行くと、お客様をすべて自社で探索して成約を目指すため、結果として物件情報が市場に出回らず、限られた自社ルートから買主、借主を決める形になりがちです。
1-2.報酬の上限(宅建業法46条)
一般消費者保護の目的で、「仲介手数料は、決められた額以上を頂いてはダメ」というルールが宅建業法の第46条で規定されています。
(報酬)第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
この条文にある通り、不動産業者の、契約を行う部屋には必ず「仲介手数料の上限額や計算方法」について書かれた紙が掲示されています。
各項目は保険の約款のように小さな字で書かれていますが、契約時に「あの内容に沿って報酬を設定しています」と指さして言うために、そこにあります。
売買の場合の上限規定
こちらが、それぞれの価格帯の報酬上限です。
取引額 | 報酬額(税抜) |
---|---|
200万円以下 | 取引額の5% |
200万円超400万円以下 | 取引額の4%+2万円 |
400万円超 | 取引額の3%+6万円 |
2018年1月1日より400万円以下の不動産仲介手数料が条件付きで上がりました。「低廉な空き家等の売買に関する特例」というものです。
低廉な空き家など通常と比べて現地調査などの費用が発生する場合、空き家の売り主または交換をする者から受け取れる仲介手数料は、上記の上限額と現地調査などの費用を合計額(上限は18万円+消費税)までです。この仲介手数料は、事前に両者間で合意する必要があります。
これは、利益の少ない取引から不動産業者を救済しようという趣旨ではなく、調査費用などの実費で削られる利益を補填する目的のものです。
少ない利益がさらに目減りしては、放置された空き家の取引など、誰もやり手が居なくなってしまう。それを防ぐ意図があると思います。
賃貸の場合の上限規定
賃貸の仲介手数料は月額賃料の1カ月分です。取引態様などの状況により分割したりしますが、上限は常に賃料1か月分で変わりません。売買のような「両手」はありません。
宅建業法「報酬額の上限」については、こちらもぜひご覧ください。
宅建業法「報酬額の上限」とは?消費税はかかる?報酬額の計算方法まで紹介
2.宅建の仲介手数料の計算方法【売買・賃貸】
仲介手数料の基本ですが、売買の場合は通常400万円以上の価格の物件で「3%+6万円」です。
賃貸の場合の仲介手数料は賃料の1か月分です。
2-1.売買の計算例
仲介手数料の計算
売買取引の仲介手数料は速算式があり、以下の式で簡単に求められます。
売買価格(税込)が 200万円以下 |
5% |
---|---|
売買価格(税込)が 200万円を超える部分〜400万円まで |
4%+2万円 |
売買価格(税込)が 400万円を超えた部分 |
3%+6万円 |
「この+2万円とか、+6万円とか、何なんですか?」
というお客様の質問に常に答え続ける状況は、不動産業あるあるの一つです。これには理由があり、本当の計算式は、
(価格が2,000万円の場合)
A:(200万円×5%)+B:(200万円×4%)+C:(1,600万円×3%)=66万円
これが本当の式です。2,000万を3つに分け、最初の200万円に5%、200万を超え、400万までに4%、それを超える部分に3%の仲介手数料が請求するので、その合計を出します。
しかしお気づきでしょうか?上のAとBは常に一定の額、60,000円になるのです。そこで、物件価格の総額にCの比率3%を掛け、あとでAとBを正しく計算したときの差異6万円を足すのです。
2,000万×3%+6万円=66万円
このように結果は同じになります。400万を超えていれば、物件価格がいくらでも同じになります。200万円を超え、400万円以下の物件では2万円を足します。
消費税
次に消費税が加算されますが、仲介手数料自体は課税業者の取引の場合必ず消費税は課税されます。(免税事業者の場合、みなし消費税分として4%上乗せを出来ます)
本体の物件価格の方は、土地の売買代金(土地は消費しない)や、個人居住用の住宅の売買(家の住み替えは商行為ではないとみなされる)などは非課税となります。
買主が宅建業者の場合でも、仲介手数料を支払う必要はあるのでしょうか?答えは「支払う必要あり」です。
ただし、一つの物件に仲介業者が多数ぶら下がっている(関与している)ケースなどでは、事前の取り決めで法定以下の仲介手数料設定をしたりします。また、前述のとおり業者売主物件の場合、仲介手数料なしです。
2-2.賃貸の計算例
月額賃料7万円のアパートの成約(居住用建物・貸主A・入居者B)を事例に計算例をご覧ください。
どのようなケースでも賃料1か月分が上限となっています。
事 例 | 仲介手数料 (報酬の上限) |
---|---|
媒介 依頼人の承諾なし |
Aから3.5万円 or Bから3.5万円 |
媒介 依頼人の承諾あり |
Aから7.0万円 or Bから7.0万円 or Aから3.5万円 Bから3.5万円 |
代理 | AB両者から 合計最大7.0万円 |
3.宅建の仲介手数料に関する質問
以下は全日本不動産協会で取り上げられている「仲介手数料の特殊な事例」です。補足説明とともにご覧ください。
自己都合で手付放棄・解約した場合
Q: ”先日、マンションの売買契約を締結し、手付金を支払いましたが、自己都合により手付放棄による解約をしました。ところが、媒介(仲介)業者から媒介手数料の残金半額を請求されています。業者には契約を締結しただけで媒介手数料全額を請求する権利があるのでしょうか。”
A: “売買契約が成立した場合には、その後、専ら契約の当事者間の問題でその契約が解約になったとしても、媒介(仲介)業者の報酬請求権は失われないと解されています。したがって、媒介(仲介)業者は、媒介手数料の残額を請求することができることになりますが、媒介報酬の請求について争いになると、裁判所は、手付解除により契約が解除されたことで、当初予定していた取引が完了せず、媒介(仲介)業者の媒介業務の量が軽減されたこと等を理由として報酬全額の請求までは認めないこともあるようです。まず、媒介(仲介)業者と話し合ってみましょう。”
媒介業者に過失のない本ケースでは、減額は検討の余地ありですが、宅建業者にも権利があります。まずは宅建業者の主張もまとめてみる必要がありそうです。
一方お客様は買い物に対する判断として手付放棄までして契約破棄をしたのですから、その事が悪いわけではありません。専門家のすり合わせが必要な件だと思われます。
この他「住宅ローン条項」といって、あらかじめ売買契約書に「住宅ローン不調の場合は契約を白紙撤回する」というふうに入れておくケースがあります。この場合、住宅ローンが通らなければ宅建業者は仲介手数料の請求権を失います。
専任媒介契約の更新をしない場合
Q: “媒介(仲介)業者に土地の売却をお願いして専任媒介契約を交わしました。しかし、売りに出してから3か月になりますが、売出価格では売れそうもありませんので、一旦売却を中止することにしました。媒介(仲介)業者に専任媒介契約の更新はしないことを伝えたところ、それまでかかった広告費用や物件調査費用を請求するといわれました。支払う必要があるのでしょうか。”
A: “依頼者が、媒介(仲介)業者に (1)特別に依頼した広告の料金 (2)遠隔地への出張旅費 がある場合には、依頼者の負担となり、依頼者は媒介(仲介)業者の請求に基づいて、その実費を支払わなければなりません。それ以外の情報登録料、通常の広告、物件の調査等のための費用は、依頼を受けた媒介(仲介)業者の負担になります。したがって、事前にあなたが依頼した(1)、(2)の費用がないのであれば、支払う必要はありません。”
宅建業者が依頼主に広告料金・出張費などの実費を請求することは認められていますが、事前に話し合いの上依頼主が依頼したもののみが対象となります。物件調査費用は最初から宅建業者が負担すると決まっているものです。報酬がなく、経費を回収したいと請求しても認められません。
2018年より始まった「低廉な空き家等の売買に関する特例」で認められる経費も、同様に事前の合意が必要となります。
契約時に全額支払うべきか?
Q: ”中古住宅を媒介(仲介)業者の媒介(仲介)で契約が成立し売却することができましたが、売買契約時に媒介報酬全額を請求されました。全額払ってしまうと最後の引渡しまで面倒見てくれるか不安です、どのようにしたらよいでしょうか。”
A: “報酬請求権の発生する時期は、当該媒介に係る売買契約が成立したときとされていますので、媒介(仲介)業者には報酬請求権はあります。しかし、媒介報酬は、宅地建物の売買、賃貸及び交換の契約が成立した際に半額、代理又は媒介の責任を完了したときに残額を受領するよう求める、国土交通省(建設省)による指導(昭和27年通牒)もあります。媒介(仲介)業者の引渡し業務を完全に履行させる趣旨です。媒介(仲介)業者と話をしてみてはどうでしょうか。”
お客様の心配はもっともなことだと思います。「国交省の指導もあり、半額は引渡し履行後にしてほしい」旨話してみるか、残り、買主への引き渡しまでのスケジュール・工程を確認しておくのもよいと思います。
出典:不動産のQ&A 宅建業者や媒介報酬(手数料)等に関するもの(不動産適正取引推進機構)
どちらにも主張に正当性がある件は、プロの宅建業者を相手に、一般消費者が「話し合いの解決」をはかるのが困難な場合もあります。下記の最寄りの相談所に改めて詳しい状況を説明し、相談してみるのもよいでしょう。
4.「宅建 仲介手数料」のまとめ
以上、「宅建 仲介手数料」というテーマで解説をしました。宅建試験受験者の人も、仲介手数料の理屈はお分かりいただけたでしょうか?
理由、背景がはっきり理解できると暗記の助けになります。
- 宅建業法制定の「仲介手数料」上限は消費者保護のためのルール。
- 「仲介手数料」計算・売買は速算式で・賃貸は賃料1か月。
- 「仲介手数料」ほか専門用語、難解な単語を意識しよう!
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