不動産業界の現状と課題!今後の動向を解説【コロナの影響も】
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いま、不動産業界は大きな岐路に立たされています。
日本の不動産マーケットは45兆円市場と言われています。巨大で盤石な業界ですが、人口減少や少子高齢化、コロナ問題などがあり、今後の成長には不透明感がつきまといます。
これから不動産業界がどうなるか、心配に思っている人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、不動産業界が直面する5つの課題をまとめてみました。
また課題だけでなく、将来を切り開くための4つの解決策にも着目しました。この記事を読めば、不動産業界の新たなチャンスが見えてくるはずです。
この記事・サイトの監修者
棚田 健大郎
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、行政書士、FP2級など多数保有
不動産業界歴10年以上。元上場企業不動産会社エイブルの営業マン。3000人の社員の中で、仲介手数料売り上げ金額第1位となるトップセールスを記録。個人のYouTubeチャンネル“棚田行政書士の不動産大学”では、登録者数20万人以上。
この記事・サイトの監修者
棚田 健大郎
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、行政書士、FP2級など多数保有
不動産業界歴10年以上。元上場企業不動産会社エイブルの営業マン。3000人の社員の中で、仲介手数料売り上げ金額第1位となるトップセールスを記録。個人のYouTubeチャンネル“棚田行政書士の不動産大学”では、登録者数20万人以上。
目次
1.不動産業界は課題が山積み?【コロナの影響は?】
日本の不動産業界は堅調に成長をしています。しかし中長期的に見ると、大きな課題に直面していることも事実です。
なかでも重要なテーマと見られているのが次の5つの課題です。順番に解説していきましょう。
- 人口減少・少子高齢化
- 地下暴落のリスク
- 2022年問題
- IT化が進んでいない
- コロナウイルスの影響
なお「不動産業界の魅力」について、あらためて考えてみたいという人は、次の記事も参考にしてみて下さい。
不動産業界の魅力とは?就職するメリット・向いてる人の特徴を解説!【業界の今後は?】 |宅建Jobマガジン
1-1.日本の不動産業界の規模は?
まず、日本の不動産業界の大きさを確認しておきましょう。
不動産業界は日本経済の中でも有数の巨大マーケットです。しかも直近5年を見ると、順調に成長していることがわかります。
たとえば、財務省の「法人企業統計年報」によると「不動産業」は次のような状況になっています。
年度 | 不動産会社の数 | 売上高の合計 |
---|---|---|
2014年度 | 310,413社 | 36兆9,811億9,100万円 |
2019年度 | 347,791社 | 45兆3,835億2,500万円 |
5年で売上規模は25%も増え、事業者数も37,000社も増加しています。日本のコンビニが6万店ということを考えれば、順調に伸びているマーケットだと言えるでしょう。
盤石な状況のように見えますが、いったいどのような課題があるのでしょうか。
1-2.人口減少・少子高齢化
不動産業界における課題の1つ目は「人口減少と少子高齢化」です。
すでに日本の人口は減少期に入っています。人口が最も多かったのは2008年の1億2,808万人でした。
それをピークに減少を続けており、国立社会保障人口問題研究所の推計によれば、2030年には1億1,900 万人に、そして2048年には1億を割り込んで9,913万人になると見られています。
また人口に占める高齢者の割合も増加の一途をたどっています。2015年から2030年にかけての人口推移の予測を見ると、次のようになっています。
- 年少者(15歳未満):273万人の減少
- 生産年齢(15歳~64 歳): 853万人の減少
- 高齢者(65歳以上):329万人の増加
こうした「少子高齢化の加速」や「人口構成の変化」は、不動産業界にも大きな影響を与えます。
たとえば、高齢者は利便性を求めて都市に集中するようになり、単身世帯が増えれば一戸建てを購入する人は減少します。
国土交通省によれば「新設住宅着工戸数」は2016年度(97万戸)から2020年度(81万2164戸)にかけてずっと右肩下がりを続けています。
また野村総研の予測によれば、2030年度には63万戸になり、2040年度には41万戸にまで下落すると見込まれています。
野村総研が2020~2040年度の住宅着工戸数を予測、コロナ影響は2020年度の第3四半期がピーク:調査レポート – BUILT
人口が減れば、住宅の老朽化も進み、空き家や空き地も急増します。
総務省統計局のデータを見ると、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は2018年で13.6%(846万戸)となっています。1963年は2.5%(52万戸)だったので、半世紀たらずで16倍にも膨れ上がっている計算です。
1-3.地下暴落のリスク
不動産業界の2つ目の課題は「地下暴落のリスク」です。
前述のとおり「人口減少・少子高齢化」が進めば、住宅購入者も減ります。長期的に見れば、不動産価格は下落していく可能性があります。
また短期的な動向を見ても、地下暴落のリスクはあります。
「地価公示価格」によれば、リーマンショック以降、不動産価格は下落傾向にありましたが、2013年から2020年にかけて、特に大都市部で継続的に地下が上昇しています。
しかし「2021年オリンピックを見越したもの」との見方もあり、オリンピックが終わると下落に転じるとの声もあります。
もっとも、過去のシドニーオリンピック(2002年)やロンドンオリンピック(2012年)では、大会終了後も住宅価格は下落していません。
ただしコロナからの回復が見えにくい状況下では、今後の地価がどうなるかは何とも言えない状況です。
1-4.2022年問題
不動産業界の3つ目の課題は「2022年問題」です。
これは、2022年を契機に都市の農地が大量に売却され、不動産価格が下落する可能性があるという懸念です。
都市の市街化区域にある農地は、「生産緑地」に指定されると優遇措置を受けることができます。たとえば、固定資産税が軽減され、相続税の納税猶予も受けられるようになります。
ただし、営農以外の行為は制限され、指定を受けてから30年が経過するまでは売却もできません。生産緑地の80%は、2022年で「30年」を迎えると言われています。
優遇措置が受けられなくなると、土地オーナーは高額な固定資産税を負担しなければいけなくなります。そのため多くの地主が、一斉に宅地として売却する可能性があります。
三大都市圏にある生産緑地は、合計で1.2万ヘクタールにおよぶと言われています。これらが売却されれば、土地の暴落が起きるのではないかというのが、この「2020年問題」です。
ポイントこの問題の対応策として、政府は2017年に、税制優遇を10年延長する「特定生産緑地」という制度をスタートさせました。2018年には、生産緑地を第三者に貸し付けても税制優遇を続けるとの「都市農地貸借法」を制定しています
また、用途地域に「田園住居地域」を追加し、生産緑地に対して建築制限を設けました。これらの施策により、地価に悪影響が起きる可能性は小さくなりましたが、実際にどのような動きになるかは未知数です。
1-5.IT化が進んでいない
不動産業界の課題の4つ目は「IT化が進んでいない」ということです。
いままで賃貸住宅の契約にあたっては、対面で重要事項の説明を行う必要がありました。しかし2017年の法改正で、オンラインによる手続きが可能になっています。これを「IT重説」と呼びます。
こうした動きを見ると、不動産業界でもIT化の動きが加速しているようにも見受けられます。しかし、実際にはまだまだアナログ要素が強いのが不動産業界の実態です。
たとえば小さな不動産会社の場合、いまだにFAXでのやり取りを主流にしていたり、メールによる対応を嫌がるような風潮もあります。
また、帳票や日報を手書きで管理するなど、生産性の低い会社がたくさん残っています。不動産業界は残業時間が長いことで知られており、IT化で効率を上げることは喫緊の課題と言えます。
一方で、日常の業務に追われていたり、古い経営陣がITに疎いことから、なかなかIT化が進められないという会社も少なくありません。
なお「不動産業界は離職率が高い」と言われていますが、その理由の一つに「業界としての古い体質」が挙げられています。次の記事も参考にしてみて下さい。
不動産業界の離職率は高い?低い?職種ごとに違う理由を解説 |宅建Jobマガジン
1-6.コロナウイルスの影響
最後に、直近の課題として見逃せないのが「コロナウイルスの影響」です。
たとえばリモートワークや在宅勤務が増えたことから、オフィス面積を大幅に縮小する動きが広がっています。また、東京にある本社を地方に移転させた会社もあります。
その結果、都内のオフィス空室率は上昇し、平均賃料も下落をしています。相次ぐテナントの撤退は、ビル経営にもマイナスに働きます。
5月の東京都心オフィス空室率、0.25ポイント上昇の5.90%: 日本経済新聞
また、オフィスだけでなく一般住宅にも影響を与えています。自宅で仕事をする人が増えたことから、新築マンションでは書斎やワークスペースを備えた物件が人気になっています。
また都心では手狭なことから、都心から離れたエリアで広めの物件に引っ越しをするという動きも起きています。
「コロナが終われば元のようなライフスタイルに戻る」という声もあれば、「もう元の生活には戻らない。リモートワークという新しい働き方が定着する」との声もあります。
不動産業界としても、コロナ後の世界がどうなるか、まだまだ明確には見通せずにいる状況だと言えるでしょう。
2.不動産業界の課題に対する解決策
5つの大きな課題について解説してきました。不動産業界は、これらの課題にどう立ち向かっていこうとしているのでしょうか。
その解決策として有望視されているのが、次の4点です。
- 海外進出の拡大
- 高齢者向け事業の拡大
- リノベーションの活用
- ITの活用
2-1.海外進出の拡大
解決策の1つ目は「海外進出の拡大」です。
すでに紹介したとおり、日本では少子高齢化が進み、人口減少は止まりません。「所有から利用へ」という言葉にもあるように「家は買わずに借りる」という人たちも少なくありません。
国内で需要の伸びに限度があるなら、海外に活路を見出すというのが一つの方法です。新興国をはじめとして、旺盛な住宅需要のある国はたくさんあります。
実際、日本の大手不動産会社は、続々と海外に進出しています。とはいえ、中小の不動産会社の場合は資金的にも難しいかもしれません。
その場合は、たとえば在留外国人への対応を強化するという方法があります。日本に中長期で滞在する外国人の数は、2019年6月時点で過去最高となる293万3,137人を記録しました。
国籍・地域別在留外国人数の推移:令和2年6月末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁
外国人対応に強い不動産会社は、まだそう多くはありません。海外進出の余裕がないなら、国内で外国人対応を強化するという方法があります。
2020年6月時点では288万5,904人へと減少しましたが、コロナが終われば再び上昇に転じると見られています。海外に目を向ければ、まだまだ需要は見つけられるはずです。
2-2.高齢者向け事業の拡大
解決策の2つ目は「高齢者向け事業の拡大」です。
日本は人口の減少期を迎えています。ますます需要は小さくなっていくわけですが、逆に今後も増えていくのが「高齢者」の数です。高齢者向けのマーケットには、まだまだ大きな可能性があります。
たとえば、住宅のバリアフリー化や、急激な温度変化で血圧の乱高下や心筋梗塞を引き起こすヒートショック対策など、高齢者ならではのニーズはたくさんあります。
また、お金に余裕のある高齢者なら、「お金がかかっても手厚いサービスのある家で暮らしたい」という要望もあるはずです。サービス付き高齢者向け住宅もその一つです。
また高齢者なら、相続対策を気にしている人もいるでしょう。意思能力が弱くなれば、不動産取引においても正常な判断がしにくくなることも予想されます。
ひとり暮らしの高齢者が増えれば、定期的な巡回や食事の宅配サービスにも需要があります。
2-3.リノベーションの活用
解決策の3つ目は「リノベーションの活用」です。
前述の通り「新設住宅着工戸数」は減少を続けています。一方で、国内の総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は、2018年の時点で13.6%(846万戸)にもなっています。
長い不況もあって、若者層の中には「住宅を買いたくても予算的に無理」という人も少なくありません。
そうした状況をふまえれば、新しい家を建てるのではなく、既存の物件をリノベーションして安価に再販するということにも大きな需要があります。
入居者のニーズは時代によって変わります。古い物件の場合、若者世代のライフスタイルや、きめ細かいニーズに応えられないものが多くあります。
たとえば、狭い部屋の壁を取り払うことで広い空間をつくったり、夫婦そろってリモートワークがしやすい物件へリノベーションしたりすることで、新たな価値を生み出すことは十分に可能です。
こうしてみれば、大いにチャンスのあるマーケットだと言えるでしょう。なお「リノベーション市場の動向や仕事事情」については次の記事も参考にして下さい。
不動産リノベーション市場・企業の将来性は?投資事業向き?求人や仕事内容も解説 |宅建Jobマガジン
2-4.ITの活用
解決策の4つ目は「ITの活用」です。
前述のとおり、不動産業界には古い体質が多く残っています。業務の効率化のためにも、またお客様にとっての利便性を向上させるためにも、ITの活用は大きな武器になるはずです。
たとえば前述した「IT重説」なら、対面ではなくオンラインで重要事項の説明が可能になります。営業マンにとっても、お客様にとっても時間の手間が省けるというメリットがあります。
このように、ITのテクノロジーを不動産業界に活用しようという動きを「不動産テック」と呼びます。この動きは今後さらに加速します。ITに強い不動産会社は、今後ますます伸びていくはずです。
たとえば、賃貸情報サイト「OHEYAGO」のサービスを使うと、物件の内見予約から入居の申込みまで、一連の手続きがすべてネット上で完結するという特徴があります。
「MOGE CHECK」というサイトでは、現在の住宅ローンを全国120の銀行ローンと比較してくれます。どの銀行に借り換えれば、どのくらいのメリットがあるかを試算することが可能です。
また「VR内見」というサービスでは、実際に物件のある場所まで行かなくても、ヘッドマウントディスプレーのVR技術を使えば、現実にその場所に行ったかのような感覚で物件を内覧することができます。
【公式】VR内見®️ 業界No.1 | ナーブ 株式会社 | NUR*VE
こうしたサービスは今後ますます活況化していきます。たとえ自社で開発ができなかったとしても、これらを自社サービスとして使いこなすことができれば問題ありません。
「最新技術を使いこなせる不動産会社」として、確実に顧客をつかむことができるようになるはずです。
なお「不動産テック」の詳細については、次の記事も参考にしてみて下さい。
不動産テックとは?仕組み・求人・日本アメリカ企業事例・学べる本も紹介!【カオスマップ付き】 |宅建Jobマガジン
3.不動産業界の将来性【課題は山積み】
不動産業界の5つの課題、そして4つの解決策を紹介してきました。
課題は山積しています。こうした中、不動産業界に将来性はあるのでしょうか。今回の記事では、全体的に暗い印象を受けた人もいるかもしれません。
しかし大事なことは、課題が大多ければ多いほど、チャンスもまたたくさんあるということです。まだまだ大きなチャンスのある業界だということは覚えておいて下さい。
国土交通省は2019年4月「不動産業ビジョン2030」を発表しました。
「不動産業ビジョン 2030 ~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~ 社会資本整備審議会産業分科会不動産部会」
このレポートは、少子高齢化や人口減少、空き家の増加や不動産の老朽化、「所有から利用へ」の加速による不動産活用の多様化、そしてグローバル化といった動きをふまえて、今後の不動産業のあるべき姿をまとめたものです。
冒頭で紹介したとおり、不動産業は45兆円というビッグビジネスです。コロナの影響でマイナスに転じたとはいえ、全体的には底堅いのが不動産業の特徴です。ビルやマンションがあるかぎり、このビジネスはなくなりません。
短期的に見れば「2021年のオリンピックが終われば不動産へ下落に転じる」との声もありますが、2025年には大阪万博もあります。
またすでに紹介したとおり、この業界にはIT化が必要な分野がたくさんあります。高齢者向けのサービス開発も重要です。住宅ならリモートワークに適した環境づくりも求められています。
さらにはライフスタイルの変化により、シェアオフィスや多拠点居住という新たな需要も生まれています。
オンラインを活用した「働き方の変化」で、地方へ移住する人も増えています。コロナをきっかけに、地方創生が進む可能性もあります。
こうしてみると、不動産業界には新たなチャンスが到来していると言えます。「大きな会社だから勝てる」という時代ではなく、「小さな会社でも強みを発揮すれば飛躍できる」という時代になったとも言えます。
旧態依然としたやり方では限界があります。しかし時代に即したアクションのできる不動産会社なら、新たな成長をつくっていくことができるはずです。
4.「不動産業界の課題」のまとめ
不動産業界の5つの課題と4つの解決策について解説してきました。
日本では少子高齢化が進んだ結果、2008年をピークに歴史上初の「人口減少社会」に突入しました。不動産業界にもジワジワと影響を及ぼしています。
今回の記事では、暗くなりがちな「課題」の側面ばかりでなく、「解決策」という明るい側面にも注目しました。
この記事をきっかけに、新しい不動産業界で活躍するにはどんな人材になるべきか、ぜひ自問自答してみてください。まだまだたくさんのチャンスがあるはずです。
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